mrbq

なにかあり/とくになし

母親名言録 その一 その二

朝、目が醒めたらホテルだった。
そりゃそうだ、と腑に落ちるまで数秒かかる。
さいわい、二日酔いは無いが、寝付きは悪かったもよう。
がやがやと手拍子がうるさいと思ったら、雨の音。
昨日、誰かが「明日は一日雨なんです」と言ってたっけ。


Kくんとお茶を飲んで別れ、一路熊本駅へ。
そこから三十分ほど南に下ると、我が実家の千丁町。
無人駅。


二時間半しかいなかったけれど、あわてるでもなく、両親と話に花を咲かす。
母親のお姉さんが見えていて、母とふたりで一緒に空港まで送ってくれるという。
道中、ここでもふたりに田辺聖子をしつこく薦める。


母親の口癖に好きなのがいくつかあって、
今日は空港まで見慣れない路を走っているときに、そのうちのひとつ、
「ぎゃーん行って、ぎゃーん行って、ぎゃーんたい(笑)」というのが出た。


訳すと、「こっち行って、こっち行って、こっち」。
適当な手振りが付くが、本人以外には誰にもわからない。
道順を尋ねられたときに、面倒臭くなって、
つい出てしまうのだ。
これが好きだ。


もうひとつ。
ぼくが反抗して背伸びしたようなことを言ったとする。
たとえば、「早う寝ろ」と言われているのに、
タワーリング・インフェルノを最後まで見らんと」と口応えする。
そのときに抜かれる伝家の宝刀。


タワーリング・インフェルノのごたる(のような)顔しとってからに!」


これが結構堪える。
比喩という言葉の意味すら超えた攻撃。
これをやられると、ひ弱な足場をはずされたり、
底の浅さを見透かされたような気分になるのだ。


それがあるから、何となく自分でも気を付ける癖があるようだ。
身の丈に合わない言葉は気を付けて使え、と。


しかし、血というのはこわいもので、
ぼくもときどき誰かが明らかに自分を底上げしたようなセリフを言っていると、
「●●●●●のごたる顔しとってからに!」
と心の中で思ってしまうことがある。


熊本空港で、必殺のふりかけ「御飯の友」ボックス(10個入り)などを買う。
家に着いたら、講談社から「ロック栄光の50年」が届いていた。
ビーチ・ボーイズマハリシ・ヨギの関係について、書いている。


ビーチ・ボーイズマハリシ・ヨギのごたる顔しとってからに!」
と言われませんように!