喫茶「モア」に行ったことあるかい
喫茶「モア」に行ったことある?
国立国会図書館本館2階にある喫茶室。
地層のように重層的なあの建物によく似合う
まるで化石のような一画。
昭和の香りが店員さんにも濃厚で
何故かミートソースを注文したくなる。
実は喫茶「モア」には名前がない。
国の管轄だからか知らないが、
「モア」は外に名前を出していない。
ぼくたちは単にそこを“喫茶室”と呼んでいた。
しかし、あるとき、
ぼくは喫茶「モア」の名前を知る。
お冷やのグラスに、
その昔風のサイダーグラスに、
白い字でそれは記されている。
喫茶「モア」。
映画「世界残酷物語」のテーマとして
60年代初めに世界中を席巻したあのメロディが
猛烈にこだまする。
だが、ひとこと言わせてほしい。
プリンの注文には気をつけろ。
生クリームとさくらんぼうでごまかしてあるけれど、
あのかたちと味は
まぎれもなく市販のプッチンプリンだぞ。
それは「モア」だけに許される、
人口甘味な喫茶残酷物語。