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なにかあり/とくになし

追憶の「大勝軒」東池袋店 その2

大勝軒」の話をもう少し続けたい。


列が動き始めた頃合いで、
店員さんが注文を取り始めた。
昔は店内に入ってから初めて注文をしていたものだが、
今は効率を優先してか、
列の段階でサクサクと注文を取る。


もっとも、あとでこの店員さん、
年嵩の店員に
「注文と一緒に『あとどれくらいかかります?』とか
 訊いてくる客はどうせいなくなるんだから、注意しとけ!」
と怒られていた。
それを言ったら、注文を早く取りすぎなんじゃないの?
と、ぼくは言いたくなったけれど。


さて、注文はぼくたちの番になった。
迷わず「あつもり」
初体験のツマにも迷わせず「あつもり」
弟は少し迷って「あつもり、ツユ濃いめ」。


大勝軒」に狂っていたころの弟は
自分に息子が生まれたら、
名前を「あつもり」にすると断言していたほどだった。


注文を言ったあと、弟は
「“あつもり”の並は量が減ったかもしれん。
 大盛りにすればよかった」と
しばらくブツブツと言っていた。


やがて、先頭で店内に入ったお客さんたちが
そろそろ食べ終えて店の外へと出て来始めた。


ここでも弟の「大勝軒」うんちくがポロリ。
「お店に入るときは意気揚々と入るんですけど
 食べ終わると満腹だから、
 みんなゆったりと出てくるんですよ」


朝から酒盛りをしていた常連組も
顔を真っ赤にしながら退席。
気分はすっかり宵っ張りと見える。


「あのひとたちの朝7時は夜の7時と一緒なんだろう」by弟。
このやろう、何となく詩的なことを言う。
詩的、でもないか。


お店の表に設けられた席(常連席か?)では
“あつもり”の湯気が冬の空気に白波を描き、
その波の向こうでは
じゅるじゅるとメンが口の中に吸い込まれていた。


「“あつもり”は最初にメンをバクバクといかんとあかんのです。
 ちびちびいったら、あとで腹につかえるんですよ」by弟。


時計は11時をまわった。
さあ、そろそろ中に入ろうか。
というところで、明日に続く。