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なにかあり/とくになし

2階の幼虫

三軒茶屋Grapefruit Moon」に
ショピン(田中磬、野々歩、高橋ペチカ)という
トリオ主宰のライヴ・イベント
ショピンのピアノソノタ 第一番」を見にゆく。


最初に出たソボブキというトリオの
性根の据わったアンバランスさが面白かった。
食えない? いや、食える?
珍味かもしれない生き物を前に議論をしているような演奏。


ショピンの初々しい演奏を見ているうちに
時差ぼけ(帰国一週間)発症。
終演後は早々に三茶を後にし、
しりとりブログもあげずに沈没する。


話は変わる。


実家のあたりは平野部で、
土地が余っているからか、平屋が多い。


ぼくの実家もご多分に漏れず一階建て。
子供の頃、最初に憧れたミステリー・ゾーンは
何のこともない、どこかの“2階”だった。


両親も知らないだろう。
親戚の家や、実家隣の倉庫の2階にあがるとき
ぼくの心臓が
どんなにドキドキしていたか。


自分たちが生活している場所より
一段高いところに、まったく別の世界があるという意識。
わかりやすい意味での“異次元”がそこにあったのだ。


小学3年生の頃、ちょっと仲の良かったGくんの家には
2階があった。
奥の間を抜けたところに階段がある。
だが、そこはぼくたちが普段遊んでいるスペースからは遠い。


2階に上がってみたい。
じりじりと悩み続けた。


そしてある日、
Gくんが近所の駄菓子屋にお菓子を買いに行ったそのすきに、
家にひとが誰もいなくなったことを確かめて
階段を一気に上った。


そこには誰かの部屋があり、
何かの箱の上に無造作にコミックが置かれていた。


手に取って「ひっ」と戦慄。
それは古賀新一の恐怖漫画「幼虫」(秋田書店)だった!


やっぱり2階はコワイ!
ばたばたと駆け下りて、
Gくんを何気ない顔で迎えるために呼吸を整えた。


古賀新一は当時「エコエコアザラク」がヒットしていて人気があった。
だが、サッカー少年で漫画なんか好きそうでもなかったGくんの2階に
どうしてあの「幼虫」があったのか、今でも謎のままだ。