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なにかあり/とくになし

レッド・カーペットと非ファンキー・ドラマー

夜の渋谷の明治通り
にぎわうセンター街や道玄坂とは違い、
一抹のうら寂しさがただよう。


その通りに黒いリムジン。
後部座席のたもとには無造作に巻かれたレッド・カーペット。
脇にはスーツを着込んだドアマン。


どうやら、ひとかどの人物が
これから降りてくるらしい。


そのひとにひとこと言いたい。
そのレッド・カーペット、
まっすぐ伸ばしたらビルにぶつかるよ、と。
先に建物のドアは無い。


あるいは、最近のレッド・カーペットは
自在に曲がるのか?


タワーレコードに寄って、
駅に向かうと、
黒人のファンキー・ドラマーがひとりであくせくと
ブレイクビーツを叩き出していた。


しかし、まるで田舎の念仏太鼓のようで、
あきれるほどファンクを感じない。
ドンドコドンドン、ドンドコドン。


そのリズム感の無さは通行人にも伝わっているようで、
彼の前に人垣は無かった。


「あれ? おかしーな、
 おれ、黒人のファンキー・ドラマーで人気爆発のはずなんだけど」


そんな心の叫びと
悪い感じの冷や汗が伝わってくる。


台風が近づく、蒸し暑い夜だった。