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なにかあり/とくになし

ラルゴにふられた晩

突然ですがLAです。
しばらくの間、
時差の都合で日付をまたぎます。


夜のハリウッド・ブールヴァード。


ウォーク・オブ・フェイムを
セルロイド・ヒーローズ」(キンクス)の気分で
ひたすら歩く。


地図の縮尺を甘く見たらしい。


目指すフェアファックス通り942番地は
まだまだ先だと
通りがかった黒人のおにいちゃんに教わった。


タクシーにするか?
いや,まだまだ歩こう。
歩いて見た感覚は、
いやというほど皮膚にしみつくものだから。


ハリウッド・ロック・ウォークの前あたりから
人影もまばらになる。


一本南のサンセット・ブールヴァードへ、
さらに西へ歩いてようやくフェアファックス通り。


大きなサボテンを植えた家の前を過ぎ,
深夜営業の無声映画館の前を過ぎ,
「スクール・ハウス・ロック」の舞台版を上演している
子供劇場の前を過ぎ,
トルコ料理やアジア料理屋が居並ぶ一画を抜け,
ようやく人混みのする目的地にたどり着いた。


そこがライヴ・レストラン「ラルゴ」。


金曜の夜は、
本来ならジョン・ブライオンの出演。
でも今週は忙しいらしく、
替わりに出演するのが
ラブリーなネリー・マッケイ。


しかし、
予想外の人混みが騒いでいたのは
「本日ソールド・アウト」の看板に対してだった。


オー・ノー。


店のマネージャーらしき男が出てきてこう言った。
「オーケー、列の最初のふたりだけ、おまけで入れたげる。
 あとのみんなはシー・ユー・ネクトタイム、
 明日はコリン・ヘイだよ」


コリン・ヘイ!
メン・アット・ワークだね。
何だか虚を突かれた。


他の“地元”の残念組は
こういうケースに慣れているのか
一瞬だけ「オウ」とためいきをもらすと
意外なほどあっさりと店を離れていった。


この店には前売りチケットというものは存在しないのだ。


帰りはタクシーにした。


アラブ系とおぼしき運ちゃんは
道中、しばらく無言を続けたのち
いきなり思い出したようにラジオをつけた。


ラルゴにふられた晩のBGMに
一昔前のダンス系R&Bがよく似合っていた。