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なにかあり/とくになし

たぶん最後の年賀状

もうそろそろ年賀状が届くのもおしまいだろうと思って
出がけにポストを覗くと、
のどに引っかかった小骨のように
一枚の葉書が奥に突き刺さっていた。


小中学校の同級生で
今は地元で住職。
高校は分かれたが
その高校時代に一番よく会っていたT氏から。


書かれていたのは、
知人の消息と
自分の近況と
家族ができて変わりゆく生活と
結局変わらない自分について。


その文面は
ぼくの心ののどにも
しっかり突き刺さった。


そのまま駅前まで歩く。
散髪をするのだ。


冬の夕暮れどきの旧中杉通り
キセルの「手紙」「春の背中」が似合いすぎて
泣きそうになる。
さっき見た手紙の文面も
たぶん影響をしている。


行きつけの床屋さんで散髪。
「仕上げは自然でいいですね」と訊かれるが、
必ず前髪はくりんと手前にまるめあげ
分け目はきっちりなでつけられてしまう。


こ、こ、これは不自然ですよ。


と口に出したい気持ちをぐっとこらえる。
床屋さんという仕事を昔から尊敬しているから
何も言えないのだ。


しかしなんだか
最近のブライアン・ウィルソンみたいな髪型になった。


この髪型だと
まともなおとなみたいだから、
少女漫画コーナーに行って
岩本ナオ町でうわさの天狗の子」の3巻を
探したりしにくくなるじゃないの!


そういう矯正か!
そういう社会勉強か!


おとなびて てぶらで帰る まんが道