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なにかあり/とくになし

猫、世界を計る

朝っぱらから
生まれて初めて
眼の検診に出かけた。


視力は良い。
これは母親ゆずり。


調べるのは
ガンアツとか
リョクナイショウとか。


べつだん調子が悪いわけではなく
区の検診につき無料で受けられるのだから、
行ってこいと背中を叩かれての訪問だった。


眼の麻酔、
そして瞳孔をひらく薬を点眼。


検診の結果は
まったく異常無しでよかったのだが、
その後2、3時間ほど近くのものに焦点が合わず、
漫画すら読めない。


疑似ではあるが
眼がわるいという状態を体験するのも
生まれて初めてだった。


なるほど
世界はこう見えない=こう見える、のか。


そう言えば、
我が家に新しい猫をゆずっていただいた方が
以前に飼っていた猫は
なんと両目が無い猫だったという話を
聞いたばかりだった。


見えていないのではなく
もともと眼球が無いのだ。


そんな状態でも猫は生きるんですかと訊いたところ、
ヒゲが触覚の役割を果たすからなのか
結構平気で動き回り、
それなりに長生きもしたのだという。


見えないものが見える、
とまで言うつもりはないが、
見える者とは
世界の計り方が違うだけなのかもしれない。


さて、
その我が家の新猫だが、
明け方に生息は確認されたものの、
朝になってもなかなか姿を現さない。


徹底的な捜索の結果、
なんと、
やつはお風呂の浴槽の裏側にある
狭い狭いスペースにいたことが判明した。


なるほど、
確かにそこはぬくいよ。


しかし、
そうとは知らず、
ツマもぼくも
ザブンと湯船に浸かってたんだってば。


無事に捕獲後、
ペットショップで買ってきた
小さな音の鳴る鈴をつけることにした。


少しずつだが
家にもひとにも慣れてきたようでもある。


新しい世界を
猫なりに計りはじめたらしい。