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なにかあり/とくになし

明日は撮影が入ります

トイレに入ると、
いつも雑然としているはずの場所が
何となくきれいに掃除されていた。


ロスにある
お気に入りのレコード屋のトイレの話だ。


便座に腰掛けると
ちょうど目線の先に貼り紙があった。


「明日は
 朝から撮影が入るので
 お昼の3時からの開店です。
 よろしくネ」


あらま、
それであわてて掃除したの?
それにしても、
何かの映画だろう?


レコード屋が出てくる印象的な映画といえば、
古くは「女と男のいる舗道」。


レコード屋そのものの話なら、
個人的な好みを言えば「ハイ・フィデリティ」よりも
エンパイア・レコード」を選びたい。


「ハイ・フィデリティ」に言いたいのは、
あんなにもてるレコード屋の店員はいねえよ、ってこと。


エンパイア・レコード」は
たあいもないB級青春映画かもしれないけど、
何だか忘れられない作品だ。


アメリカの小都市にある
さえないCDショップで、
若いころのリヴ・タイラー
レニー・ゼルヴィガーが働いているという設定は
今考えればけっこうすごい。


そう言えば、あの映画の中には
店員がシャッグスを薦めるという重要なセリフもあった。
日本語字幕ではカットされていたけど、
あれは脚本なのか
それともアドリブだったのか。


そんなことを思い出しつつ
レジで会計を終え、
店のおっちゃんに何の撮影なのか訊いてみた。


「ああ、あれね、
 おれたちもよくわかってないんだけど、
 どうもゲーム・ソフトに使うらしいんだ。
 おれたちが働いてる姿を背景に使うんだって。
 何のゲームか知らないし、
 別に宣伝にもならないんだけど、
 笑えるから、まあいいかと思ってね」


撮影は朝8時半から始まるから
早起きしなくちゃいけないんだ、と
おっちゃんは苦笑いした。


また来るよと挨拶をして
店を出ようとしたら、
「ちょっと待った!」とぼくを引き止める声。


おっちゃんから
ニッコリひとこと。


プレステ3らしいよ!」


プレステ3をお持ちの方、
これから数ヶ月後に
レコード屋の出てくるゲームが発売されたら
教えてくださいね。