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なにかあり/とくになし

BALLAD

吾妻ひでお「地を這う魚 ひでおの青春日記」(角川書店)に
度肝を抜かれる。


話の大筋だけで言えば
1968年、吾妻氏の駆け出し時代を追った
誰にでもある「まんが道」なのかもしれない。


だが、
漫画しか生きる術がないという切実さと
漫画では生きられないという現実と
漫画にしか描けないものがあるのか、
いやあるはずだという自問と妄想とがせめぎあう
紙一重の場所にある
その紙に描かれているのが
この漫画なのだと思う。


悔しかったら
この行き場のない傑作を実写化してみろと
誰に向けるでもなく
無性に言いがかりをつけたくなる。


昼間、ハイファイにも
「吾妻さんが」「吾妻さんが」と大量にお客さんがやって来るので
おお、みなさんも「地を這う魚」をお読みでと驚いたが
そんなはずはなく、
渋谷タワーレコード5Fで行われた
吾妻光良&スインギン・バッパーズの無料インストア・ライヴを
見に駆けつけた方々だった。


ちゃんちゃん(ジングル)。


先日のハイラマズ日本公演を主催された創作グループ、
サイトクノから
素敵な贈り物が届いていた。


彼らが作った
いっぷう変わった知育マガジン「BALLAD」の創刊号。


ハイラマズのショーン・オヘイガンや、
ヴァシュティ・バニヤン
彼女の娘でイラストレイターのウィン・ルイスへの取材など
充実したイギリス取材を交えた構成は
イギリスのアコースティック音楽好きにはたまらないが
あえてこれを音楽雑誌とは言いたくない。


「音楽雑誌」と口にしたときに感じる
押し付けがましい口やかましさがない。


それに
「音楽雑誌」が「音楽の雑誌」であろうとするがために
ぽろぽろとこぼれ落ちてしまうひそかで大切なものが
いくつもここには書き留められている。


ウィン・ルイスは
ヴァシュティの素晴らしい復活アルバム「ルックアフタリング」で
印象的な野ウサギの絵を描いている。


彼女のポートフォリオから選ばれた
鹿の美しいイラストが
雑誌「BALLAD」のめじるしだ。


前後の肢を折り曲げて休む鹿の
その折り曲げた膝の内側に感じるような
やさしいここちよさを
ページをめくるたびに感じた。


追記。
4月9日より、
ハイファイ・レコード・ストアでも販売を開始しました。