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なにかあり/とくになし

中央線ドロップス

元町夏央


そう言われても、
漫画家の名前では思い出せなかった。


それでも表紙に描かれている顔の
目力(めぢから)に強く惹かれる何かがあり、
とりあえず小玉ユキ坂道のアポロン」3巻などと一緒に
購入した。


それが
元町夏央「中央線ドロップス」(アクションコミックス)。


「アクションA-ZERO」という
漫画アクション」の増刊誌に連載されていた
JR中央線沿線に暮らすひとびとをめぐる連作短篇集で
元町さんにとってはこれが初めての単行本らしい。


ページをめくってすぐに思い出した。
このひと、
「スピリッツ」に
血のつながらない姉弟
やらしいせつない話を短期で描いてた!


「てんねんかじつ」というタイトルだった。


「中央線ドロップス」には
「てんねんかじつ」ほどの
濃密さや
やらしさ
やりきれなさは
期待したほどにはなかった。


でも
自分のつくる物語に
まだ自分で納得しきっていないような部分があって、
物語への自分の抵抗みたいなものが
目の力となって吹き出しているのだ。


驚くほどの傑作じゃないけれど
中央線文化を持ち上げるいろんなメディアを喜ばせるだけの
単なる中央線ほろ苦ストーリーにも甘んじてない。


元町夏央という名前は
覚えておくことにする。


名前を忘れてしまっても
あの目が思い出させてくれるだろう。


ところで
うちの猫が先日ヒニン手術をしましてね。


傷口が痛むのか
まだ食欲もなく
猫はおとなしく横たわっている。


剃毛をしたすっぽんぽんのお腹から
メス猫であるしるしのちっちゃなちくび(6個ほどある)が
ときどき見え隠れするのが
ちょっとやらしいなとひそかに思う。