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なにかあり/とくになし

阿佐ヶ谷RAREに捧ぐ

いつも松永さんはどこでレコードを買っているんですか?


そう訊かれると、
迷わず
「阿佐ヶ谷のRAREです」と
答えることにしている。


正確に言うと
中古なら阿佐ヶ谷RARE、
新譜なら西新宿バーンホームズ
ということになる。


阿佐ヶ谷RAREは
何よりも地元の店だし、
駅ビルの1階という立地の良さで、
価格的にも気楽な買物が出来て、
そこそこの掘り出し物があるということも
好感度が高い。


最近模様替えがあって
CDを前面に出したレイアウトになったのが
レコード買いにはちょっと不便なのだが、
好感度をくつがえしてしまうほどの痛手ではない。


BGMのセンスも何気なくいい。


サンハウスブルースマンではなく博多のバンドの方)は
レコード屋で流れているのを聴くのが
やっぱり一番好きだなあとか、
そういう認識を新たにさせてくれたり。


だが最大の理由は
朝10時から夜10時までやっているという
営業時間の魅力に尽きる。


以前は
阿佐ヶ谷には
「ゴーゴーレコード」という
深夜まで営業をしている偉大なお店があった。


帰り道に
駄菓子屋で買い食いをするような感覚で
レコードにさわれることが
ささやかな、
しかし、とても大切なしあわせだった。


阿佐ヶ谷RAREを
ぼくが評価しているツボは
つまり
仕事に出かけるときと帰るとき、
ふらっと立ち寄ることが出来るからなのだろう。


別に血眼になって何かを探すわけでもない。


朝は喫茶店モーニングコーヒーの替わりであり、
夜は一杯立ち飲みの替わり。


9時に渋谷のお店を閉めて
乗り継ぎがうまくいくと
RAREで過ごす時間を10分ほど取ることが出来る。
もうそれで充分。


もちろん日中も
仕事でレコードにさわっているわけで
冷静に考えればどうかしているのかもしれないが、
仕事で扱うレコードと
ほっと息抜きをするために触れるレコードとは
たとえ同じ一枚でもまったく違うのだ。


一日中レコードばかり聴いた仕事帰りに
それでも買いたいレコードだってある。


小西康陽さんが
昔、ある雑誌で
「一晩中大きな音で音楽を聴き続けて明け方に家に帰り着き
 それでも聴きたい一枚」として
ジミー・ジュフリーのレコードを挙げていた。


今、ぼくにとって
そういうレコードを探すために
阿佐ヶ谷RAREは今日も夜10時まで営業している。