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なにかあり/とくになし

暴れ猫

去勢したはずの猫がここのところ
さかっている。


昨夜、
棚を落として破壊したというのに
そんなことはけろっと忘れて
今夜も夜中だというのに走る走る。


そうか。
生まれてまだ半年ちょっとのこいつにとって、
知っている季節は秋と冬だけ。
この暖かい夜の到来は
はじめての経験なのだ。


寒い夜になったら
何かにくるまったり
うずまったりして暖をとった、
その必要がないんだと
はしゃいでいるのだろう。


それにしても
うるさい。


昨晩に続いて
今夜も忌野さんのライヴを放映していたので、
それに集中したいのだが、
「ねえねえ。あたしをかまってちょうだい」と
そこらじゅうを転げ回る。


しょうがないので
視線は画面に据えたまま
右手で猫じゃらしを動かして
猫の気をそらした。


気持ちもからだも
ゆるやかに忙しい数十分だった。


そう言えば、
前にも
これに似たような経験があった。


若くして死んだ従姉のお葬式の日、
式の開始を待つ間、
まだ小さくて死にまつわることがわからない甥っ子の
遊び相手をずっとしていた。


それはそれで
心を散らかし
悲しみをまぎらす。


あちこちに転がる猫は
若いころの忌野さんみたいでもあった。