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なにかあり/とくになし

ホット・ショッツのこと

ホット・ショッツというバンドの名前を聞いたのは
1999年の初め。


NRBQの再来日公演のために
パンフを作りたいと申し出したところから、
ひょんなきっかけで公演そのもののお手伝いをすることになったとき、
テリー・アダムスが最近夢中になっている
日本人バンドとして紹介されたのだった。


その名を聞いて
はぐぐっ、と言葉に詰まった。


まったく知らなかったからだ。


それもそのはずというか、
そのバンドのCDは
まだ一枚もリリースされていなかった。


いろんなきっかけがあって
ホット・ショッツの7インチ・シングルは
アメリカのダイオニソスというレーベルからリリースされていた。
日本では
バンドのライヴでの手売りか、
西新宿のバーンホームズぐらいでしか輸入していない。


しかし、
テリーはそれをどこかで聴いたのだった。


そんなバンドが知らないところにいる、
しかも日本に?
ということで探りをいれるうちに、
リーダーのチエちゃんの連絡先を知ることができた。


まだブログもMySpaceもない時代だったのに、
よく見つけられたなと思う。


なにしろ
チエちゃんの方は
NRBQからラブコールを送られていることを
まったく知らないどころか、
彼らの音楽すらほとんど知らなかったのだから。


もっとも
日本のどこかの音楽雑誌も
テリーのインタビューで
「最近気に入っている日本のバンドはポットショット」
なんて誤訳をしていたけど。


とにもかくにも
その年の来日公演で
ぼくはホット・ショッツとNRBQの橋渡しをした。
テリーとチエちゃんの音楽的交流は
今も続いている。
ホット・ショッツの最近の2枚のアルバムは
テリーのプロデュースによるものだ。


ぼくもその交流にあずかって、
現在まで4枚出ているホット・ショッツのアルバムの
ライナーノーツをすべて書かせてもらっている。


彼女たちがやっていることは
いつもほとんど変わらない。


屈託がなくて
愛情が過剰で
きっぷがよくて
無意識のうちに音楽がジャンルからはみだしている
カントリーのようなロックンロールのようなコンボミュージック。


ぼく自身の接し方、感じ方が
少しずつ変わっているのか
そのときどきで違った書き方が出来ているのが
自分でも不思議な気がする。


チエちゃんから
最新作の「ティーン・ストリート」が
アメリカでもテリーのレーベルからリリースされるという報せをもらった。


何とそこには
ぼくの書いたライナーの英訳も掲載されるのだという。
テリーが抄訳を読んで
「ここに書いてあることは的を射ている」と
言ってくれたんだそうだ。


自分の書いた文章が違う言語になって
外国のひとたちの目に留まるのは初めての経験だ。


それが、
こういう妙な縁を通じての実現であることが
くすぐったくて、とてもうれしい。