mrbq

なにかあり/とくになし

漫画リテラシーという言葉

金曜の晩に飲んだ友人は
「自分の中には“漫画リテラシー”が、もうあんまり無い」とも言っていた。


漫画リテラシー(マンガ・リテラシーとも書く)とは
単に筋を追うという意味とは違う
漫画の読み方の作法というか
漫画に描かれた世界の把握の仕方みたいなことを指すらしい。


彼が言いたかったこともわからなくはない。
そう言えば、
ぼくにもこういう体験はある。


年長の知り合いに
最近の漫画は「美味しんぼ」しか読まないというひとがいて、
そのひとは自己分析として
自分は描いてあるものが何なのか
見てすぐわからないといやなのだという意味のことを言っていた。


それを聞いて
「へえ、じゃあ栗●さん(「美味しんぼ」のヒロイン)が
 美人だって設定に疑問はないんですか?
 そんな理解は
 “わかった”とは言えないんじゃないですか?」
と、自分の中の“ああ言えばこう言う”虫が発動し、
暴言をぶってしまった。


「なんだと! ●田さんはかわいいじゃないか!」


中年の口論としてふさわしくありません。
ごめんなさい。
しかし、これもまた
漫画リテラシーにおけるイデオロギーの対立と言っていいんでしょうな。


伊図透「ミツバチのキス」1巻(アクション・コミックス)を
やっと読む。


自分の意志にかかわらず
ひとの心が読めてしまう少女のおはなしで、
こういうテーマの前例には
筒井康隆「七瀬ふたたび」を挙げるまでもなく
SFや漫画に数々の名作がある。


だから、
あえて、
しばらく手が伸びなかった。


しかし
結論から言うと
もっと早くに読んでおくべきだった。


設定面やストーリーがやや類型的な面など
気にかかる面もなくはない。


ただ、
そんな些事はどうでもよくなる瞬間があちこちにある。


パンク的な感情の高まりを隠し持った
プログレを聴いている、
という表現もまたひとつの類型かもしれないが、
そう言わずにはおれない作品だった。


おれが真っ先に読むべき漫画はこれだったんだ!


それが正解かどうかではなく、
そんな気持ちにさせられることの方が大事だ。


主人公の女性が
動物にだけは気が許せるという
ささやかな場面の描き方も、ぐっとくる。


どうも
ぼくの中の漫画リテラシーは(もし、あるとしたら)
いまだに感情論に左右されているところがあるらしい。


お知らせです。
リンクに
ぼくがお手伝いをしているネット・ラジオ・コンテンツ
小野瀬雅生のEat A Talk」を追加しました。