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なにかあり/とくになし

願わくば

ロイ・エアーズ@渋谷DUO。


去年、ニューヨークに行ったとき
ブルーノートでやっていたけど
満員で入れなかったロイ・エアーズ


運良くお誘いをいただいたので
ほいほいと出かけた。


フロントアクトは
CRO-MAGNON
INO hidefumi


INO hidefumiは素晴らしかった。


デザインされた音楽に
肉体というか
演奏しているという実感を持ち込むのって
実は結構難しいはずなのに、
そこのところが軽くクリアーされていた。


かっこいいか
かっこわるいか
ではなくて
おもしろいか
おもしろくないか
で音楽を考えているひとだと
あらためて思った。


作品には作品のパッケージとしての良さがあるけれど
今はライヴの方が断然おもしろいかも。
はみだしてるから。


全然言い得てないたとえ方をしてみる。


たとえばモーツァルト
ピアノ協奏曲の新しいのをつくったり
バッハを好きにアレンジしてみたりしたものを
貴族たちに聴かせて
「おまえ、何考えてんの? 頭おかしい? でもおもしろいね」と
言われているような
クラシックがロックに値した時代のクラシックを
今の時代の流儀でやってみせている感じ。


モーツァルトでもクラシックでもないんだけど。


トリで出て来たロイ・エアーズ
もっとすごかった。


pumaのスウェットに
上は大阪のおばちゃんが着てそうな激烈デザインの
ぴっちり長袖T。
変な帽子といんちきくさいサングラス。


のしのしとファンキーに動き回り
歌ったり、エレクトリック・ヴァイブを叩いたりするさまは
球場の外野スタンドで
勝てない球団をめげずに応援し続ける名物おやじのようでもあった。


それは決してイヤな感じではなく
むしろ「ロイ・エアーズはこんなクールな音楽です」という先入観を
一発で吹き飛ばす類の
愛と笑いに満ちた最高のたたずまいだった。


かっこうだけじゃない。
演奏も生きていた。
あやうくグルーヴが破綻しそうになる瞬間があっても
「あらよっ」「ほれ、がんばれ」と立て直す。


音楽そのものをみんなで応援しているような
いい気分にさせられた。


昔はよかった。
昔が好きだ。
でも今は今だ。
今生まれるものも
好きでいたい。
そうありたい。
願わくば。


70分と聞いていた演奏時間を
はるかにオーバーして
終わったのは11時半。


急いで駆け込んだラーメン屋で
あとから同じ店に入ってきたロイ・エアーズ帰りの若者連れが
「あー、もう終電ないけど、まーいっか!」と
感服したように言っていたのが印象的だった。


いろいろあった5月だけど
何だか非常に元気づけられたわけです。