ミスター・サンドマン
去年、
めぐりあわせがあって
コーデッツという1950年代のコーラス・グループの
CD再発を監修した。
監修と言っても
膨大なLP未収録曲の整理整頓と
ライターさんの割り振りをしたぐらい。
個人的には
ある方にどうしても一文書いてほしかったのだが、
急なお願いということもあってかなわず、
責任を取ってその代役はぼくが務めた。
拙文でお恥ずかしい限りでした。
恥ずかしいついでに告白してしまうと
彼女たちの代表曲である「ミスター・サンドマン」について
あの曲に出て来る“サンドマン”が
ひとを眠りに誘う砂の妖精であることを
初めて知った。
ヨーロッパ経由でアメリカに言い伝えられたというこの妖精
時代を経て一般的に流布していくにしたがって“眠らせる”になっただけで
本当は“死の世界に連れてゆく”のではなかっただろうか。
日本で言えば“砂かけばばあ”が
「ゲゲゲの鬼太郎」で
本来のキャラから離れて
コミカルな正義の見方になっているのと
なんとなく近い。
砂をかけて眠らせる→必殺技で地獄へ道連れ、というキャラを
プロレス上で使用していたのが
東海岸で90年代に隆盛を誇った
ハードコア・プロレス団体ECWのレスラー、サンドマンだ。
コーデッツの歌う「ミスター・サンドマン」と
ECWのサンドマンは
眠らせる程度の強弱はあるが
基本的に同じキャラということになる。
さらに言うと、
「ミスター・サンドマン」は
ボブ・ディランの「ミスター・タンバリン・マン」に
ちょっとだけ影響を与えているのではないかと思う。
あの曲で
タンバリン・マンに「ぼくは眠くない」と
歌の中の主人公が真っ先に呼びかけるのは
明らかにサンドマン伝説の
“眠くなる”という下敷きがあるからではないだろうか。
タンバリン・マンが連れていってくれる世界が
夢の世界なのか
地獄なのかは
彼は歌っていないけれど。
それとも
こんな話は
ディランのコアなファンの間では常識なのか、
とっくに否定し尽くされた話なのか、
ぐうたらライターの思いついた単なる珍説なのか……。
初期のRCサクセションの
隠れた名曲「ねむい」につないでおくれよ、DJ。