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なにかあり/とくになし

真夏の床屋にて

休日。


髪を切り、
靴を買った。


これにて
ここしばらくの懸案2件、解決。


最近は
以前にも書いたように
阿佐ヶ谷駅近くの床屋さんで
散髪をしている。


猛暑の昼さがり、
店内に先着の客はなく
ふたりの理髪師は
ぼんやりとテレビを見ていた。
「相棒」の再放送中だった。


「いらっしゃいませ」と迎え入れられ、
散髪台に腰掛ける。
大きな鏡に
背後にあるテレビの画面が映る。


再来年のテレビ地上波デジタル完全移行を見据えて、
まだ切り替えをしていない家庭のテレビでは、
画面の右上に「アナログ」という文字が出ていることは
みなさんご存じだろう。


アナログ・レコードが好きで
それを商売にしている人間としては
うれしいです!
……なんて、強がってみる。


しかし、
なかなかお茶の間での移行は進んでいないらしく、
最近は番組開始と同時に
「はよ移行せんかい、ボケ」という恫喝メッセージを
もっとおしとやかにした表現で
視聴者に迫ってくる。


うるさいな。


日本人は
親に「勉強しなさい」と怒られたら
かえってしたくなくなる人種だということをお忘れか!


それに、
デジタルに移行することで
確かにいろんなメリットはあるのだろうが、
なんというかこの、
かゆいところに手が届くやさしさ、みたいなものはないの?


田舎にいたころに通っていた床屋さんには
文字盤と回転がきれいに反転した壁掛け時計があった。
鏡に映って
散髪中のお客に読めるようにした特注品。


熊本の田舎だけに存在したとは思えないので
“床屋専用”みたいな触れ込みで
それなりに出回っていたのではないか?


一般的に考えれば
売れそうにも思えないのだが
確かに生きる場所がある工夫。
そこには人間の持つ心配りというアナログなセンスがある。


だからさ、
デジタル移行したら
床屋さんのテレビも左右反転が簡単に出来ます!
なんて、
出来るかどうか知らないし、
隙き間もいいところのアピールかもしれないけど、
デジタルな技術にそういうアナログな心があるってとこが、
意外と視聴者に受けるんじゃないかと
髪を切りながら
左右のひっくり返った「相棒」見てるときに思ったりした。


髪は襟足をさっぱり、
もみあげも短めに、
夏仕様で仕上がった。


ちなみに、
新しく買った靴は
欲しいと思っていた赤ではなく
意外にも
黒だった!