mrbq

なにかあり/とくになし

街の皆既日食

出勤途中の通り道に
またしてもブティック的な店がオープンするようで
あわただしく外装の最終仕上げが行われていた。


不吉なことを言って申し訳ないが
この場所の
新規開店を見るのは
もう何度目だろうか。


今までの店はダメだったかもしれないが
うちは違う!
この新しい店のオーナーさんも
それなりの勝算を持っていらっしゃるのに違いないし、
今度の店こそうまくいくかもしれない。


不動産屋さんから紹介を受けるときに
その場所の履歴についても
ある程度の情報はもらえるのだろうか?


それとも
出店にとって不利になるようなデータは
内緒にされてしまうのだろうか?


それともそれとも
計画の段階では絶対に当たる勝算があったにもかかわらず、
その土地の磁場というか
長年積もりに積もった怨念が呼び込む地縛霊が
当たらぬように当たらぬようにと
ひそかに誘導をしているのだろうか?


ほら、
最後の最後で
ショーウィンドウに致命傷なダサいデザインをしちゃうとか。


開店準備に追われ
あわただしく動くスタッフたちの姿は頼もしそうで
今度こそはこの場所に幸あれ、と
ぼくもお願いしながら通り過ぎた。


輝かしく開店した店が
いつの間にか
がらんどうと化して
商店街に暗い影を投げかける。


これを“街の皆既日食”といい、
全国あちらこちらで起きている。
世紀の天文ショーに大枚を注ぎ込まなくても
目に飛び込んできますよ。


その反対に
音楽を生み出す場所として
燦然と輝いていた歴史的なレコーディング・スタジオの数々に
スポットライトを当てた
ジム・コーガン&ウィリアム・クラークの名著「テンプル・オブ・サウンズ」の
邦訳版「レコーディング・スタジオの伝説」が
P-Vine BOOKsより発売になった。


訳は奥田祐士さん。
読み物としてはちょいと値が張るが
写真も原著同様に豊富だし、
ヒットソングを量産するという意味での“当たる店”の話だもの。
ここはひとつ、
あやかってみませんか。


では、これから(24日朝6時)、
フジロックに行ってきますね。