白髪のアイドル

久しぶりに会ったひとに
「頭！」と言われることが多くなった。

何か落ちてくるのかと思って上を見上げるが
何もない。

相手が指しているのはぼくの頭のこと。

頭がどうなっているかというと
何となく白くなり始めてているのです。

自分の父親を思い起こせば
ぼくが中学生になるころには
すでにそうとうな白髪ではなかったか。

父はだいたい40歳過ぎぐらいだったと思う。

自分もやがて早くに白髪になってしまうのだと思うことは
思春期には結構な恐怖で
それでなくても若白髪があったから
鏡を見てはまめに抜いたりしていた時期もあった。

そんな心の支えになっていたのが
当時「11PM」火曜、木曜（つまり関西制作）の司会だった藤本義一氏。

白髪でも（そもそもこの前提がおかしいのだが）
あんなにかっこいい。

つまり、
ぼくは「11PM」をエロ心で見ていたのではなく
自分が白髪になる恐怖に立ち向かい、
救われるために見ていたのです……とかなんとか。

白髪のアイドルと言えば、
アンディ・ウォーホール！……なんて言えたらよかったのだろうが、
まだその存在をよく知らず。

とにかく藤本義一は
しばらくぼくの白髪のアイドルだった。

そのころの思い出で言うと
ビートたけしが「オールナイトニッポン」で
「戦場のメリークリスマス」で共演した坂本龍一が
白髪が多いことを非常に気にして染めていたという話を
暴露したことも印象深い。

のちになって
たけし自身も長い間白髪染めを使っていたことを知るのだが。

結局、
ぼくもかつての父親と同じような歳になり
ゆっくりと髪から老け続けている。

今、こわいのは
藤本義一になれたらいいんだけど
ひょっとして関●宏になったらどうしようってことかな！