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なにかあり/とくになし

110年と1日前の脱出

昨日は
本のプレゼント企画(というか処分の手伝い)に
多数のご応募をいただきました。
ありがとうございます。


不要本をお引き受けいただく御礼に
粗品を添えて送りたいと思います。
しばしお待ちください。


土曜の夜のハイファイ勤務を終え
渋谷駅に着く。


今日はいつもよりちょっと早く帰れそうだと
いそいそ改札に向かうとあやしいひとだかり。


オーマイガッ。


新宿駅で人身事故発生のため
山手線ストップとのこと。


しかたなく
副都心線丸ノ内線南阿佐ヶ谷駅下車というルートを選択。
ところがこちらも車両トラブルだとかで
駅員さんがぺこぺこと
あちらこちらで頭を下げまくっている。


オーマイガッ、アゲイン。


しかし
話を聞けば
不通になっているのは池袋よりずっと先の乗り入れ線路で
新宿三丁目までは問題なしだという。
ではいっちょう乗らせていただきます。


順調ならもう阿佐ヶ谷に着いたっておかしくない時間に
渋谷の地下をうろうろとさせられる手間に
もっと腹が立ってもよさそうなものだが、
そうはならない理由があった。


須川邦彦「無人島に生きる十六人」(新潮文庫)を
もうすぐ読み終わるところだからだ。


明治時代の日本人船乗りたちが体験した
知恵とたくましさにあふれる無人島生活記。
彼らの漂流と無人島での苦労に比べたら
ちょっと遠回りするくらい
なんてことない。


地下鉄はもたもたと渋谷駅を出発したが
その時間を利して本はどんどんクライマックスに進む。


原著は第二次大戦直後に
子どもたちのために書かれた本だが
日本語がうつくしくて
表現のいちいちがものすごく素敵だ。


ストーリーも感動的だが
その語り口がなおさらによい。
ただの文字の並びであるはずの字面だけ見ていても
心が無性にうずいてしまう。


副都心線北参道駅手前で一度、
さらに丸の内線中野坂上駅停車中に一度、
はらりと落涙しそうになる。


そして新高円寺駅を過ぎたところで
ついに無人島脱出!


その日付を見て
びっくりした。


明治32年9月4日。


それは今日からちょうど
110年と1日前だった。


南阿佐ヶ谷駅から地上に上がり、
家までいつもより少し遠い道のりを
ちょっと胸を張って歩いた。


この素晴らしい文庫本、
あのこしゃくなア●ゾンのマー●ットプ●イスでは
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