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なにかあり/とくになし

白い世界に

ちょっと前の夜の話。
新宿西口を出て甲州街道の交差点に差し掛かったところで
ツマが上空を「ほら」と指差した。


月でも出てるのかと思ったら
そうではない。


交差点に面したビル群の屋上に掲げられた
いくつもの看板広告。
そのほぼすべてが
きれいさっぱり真っ白になっていた。


その白さは
きれいだが不気味でもあった。


広告が入らないのだ。


こないだ
鈴木慶一のライヴ(おもしろかった)を見たあとで
渋谷のちとせ会館の前を通りがかったときも
思わず足を止めてしまった。


バブル期に
あれほど無数の居酒屋のロゴ看板がひしめきあっていた
あのビルの壁面が
白いまだらになっている。


空いたテナントの後釜が
ほとんど入っていない。


後日
そんな話をハイファイで常連さんとしていたら、
そのお客さんがぼそっと言った。


「東京はさ、
 ようやく(目に見える不景気が)始まったところなんだよ」


確かにそうなのだ。
ぼくの田舎に帰れば
市内の商店街はもはや瀕死。
“商店”や“街”の様相を呈していない。


もっと言えば
雑誌をめくれば広告は少なく
いわゆる自社広告で穴埋めしているページの何と多いことか。


もしあそこに自社広告がなければ
あのページは白いままだ。


テレビの自社CMにもそれが言えるわけで
ぼくたちがCMだと思って見ている画面は
本当は真っ白でもおかしくない。


「これから世の中は
 もっと白くなるよ」


ぼそっとお客さんはつぶやいた。


「うわー、その言い方、
 ホラーですよ」


ぼくが茶化すと
お客さんはこう切り返した。


「これがホントのホラー吹き、
 なんつって!」


なんつって。
上の発言(↑)はぼくの妄想です。


ほら、こんなこと言うから
すっかり白けちゃったじゃない。
白けちゃった……
白けち……
白け……
白……
し…










































































































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