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なにかあり/とくになし

ふにてん、うにてん、めがてん

週刊文春」に連載中の
小林信彦さんの「本音を申せば」で、
シルヴァー・ウィークの話題が上がっていた。


その中で
小林さんは
“今風”に書くと“シルバー・ウィーク”であって
“シルヴァー・ウィーク”という表記は
古い世代に属するという意味のことを書いている。


え? そうなのか?


一瞬かたまる。


ぼくは
ハ行に濁点の方が
ウに濁点よりも古いという感覚があったからだ。
それは自分の勘違いで
ぼくの方が古い人間だったのか。


これって
ぼくの仕事的に言うと
たとえば“ボーカル”か“ヴォーカル”か?
“ライブ”か“ライヴ”か?
“ラブ”か“ラヴ”か?
という問題だったりする。


よくぶちあたるのが“ヴォーカルorボーカル”問題だ。


もちろん雑誌やメディアによってそれぞれの禁則があり、
そこを無視して“ヴォーカル”じゃなくちゃダメだとは言わない。


ひとえにこれは
英語に忠実というより
ある潜在的な意識の問題だ。


“ボーカル”と言われると
大きく開けた口から「ボー」と声が一本調子で出ている感じがする。


たぶん、それがダメなのは
ドラえもん」でいうところの「ジャイアン・リサイタル」の
「ボエー」に感じが似ているせいだ。


ジャイアンこと剛田たけしは
想像を絶する音痴で
ときどき友人たちを集めて原っぱでリサイタルを開催する。


そのときに藤子・F・不二夫先生が開発された
歌詞やメロディを必要とせずにジャイアンの悪声を表現する奇跡の擬音、
それが「ボエー」。


だから“ボーカル”と書くのはちょっと抵抗があるんです。


でも最近、ジャイアンの声優さんは子どもに交替したので
「ボエー」も聴きやすくなったんですよ、とか
そういうことになっているのかもしれないね、世の中ってやつは。


しかしまあ、
みんな「ボエー」のせいだなんて、
そんなこと言われたら
編集者はみんな目が点だ。


いや、フに点かウに点か、って話なんですけどね。