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なにかあり/とくになし

バトンタッチ、渋谷の路上にて

街角で
何とも憎めない浅黒系の顔をした方々が
ときの有名人を表紙にした
ぺらぺらの雑誌を掲げて販売している光景を
見かけたことがあるひとは少なくないだろう。


ぼくの友人は
「表紙よりも
 あのおっちゃんたちの顔にやられて買うんだよ」
と言っていた。


ホームレス支援を目的として販売されている
総合オピニオン誌ビッグイシュー」を
初めて買った。


いつものように通り過ぎようとして
アトムとパパ(バカボンの)の表紙に目が止まり、
さらに
ふたりの天才漫画家の娘対談というキャッチに惹かれて、
横断歩道を途中まで渡りかけたところで
と、と、と、と後ろ向きに戻った。


おっちゃん、
これおくれ。
300円。
なぬ。
TVブロス」でも180円、
R25」なら無料の時代に300円?


それでも、
せっかく戻ってきたのだからと観念し、
100円玉を3枚渡して
点滅を始めた青信号へ駆け出した。


その中ほどまで渡ったとき
突然うしろから裾をつかまれた。


うわ!
何者?
追っ手?


振り返ると
おっちゃんが必死の顔でぼくに訴えかけていた。
「お、おまけ、おまけ」


そう言って手渡されたのは
ディカプリオが表紙のバックナンバー。


どうやらそういうサービスらしい。
間が悪くてちょっとドキドキさせられたが、
路上でふたりの中年が交わした
意味も無くドラマチックなバトンタッチは無事成功した。


バックナンバーは
よく見ると2008年6月の発行だった。
おっちゃん、おまけはもうちょい最近のやつにしようぜ。


お目当ての
手塚るみ子×赤塚りえ子の対談はまあまあおもしろかった。
収穫と思えたのは
巻頭の菊地成孔インタビューで
短めながら内容が濃く
思いがけない本音を聞いた気がした。