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なにかあり/とくになし

タヌキ

昼過ぎ(17日の)、ブログを書こうとしたときに
加藤和彦さんの訃報を知る。


加藤さんのことをあれこれ書くつもりはなかったのだが、
こういうニュースがあると考えが乱れ、
それまでに書こうと思っていた別のテーマも
芯が揺らいでふにゃふにゃになってしまう。


懸命になって考えを立て直そうとすると
考えのための考えになってしまって
どうもいけない。


そういうときは
無駄な抵抗はよして
引っ張られてみるしかないのだろう。


加藤さんのアルバムで
真っ先に思い出すのは
フォーク・クルセダーズでも
ミカバンドでもなく
フォーク・クルセダーズ解散直後の1969年に出した
「ぼくのそばにおいでよ」というアルバム。


といっても
このアルバムを聴いたのは
そんなに昔の話ではなく
知人からいただいたCD-Rにセレクトされていた
「タヌキ」という曲から受けたショックがきっかけだった。


だから、
もともと2枚組の大作になるはずだったとか
そういう逸話を抜きにして
まず「タヌキ」から聴いた。


そして今でも
ときどき「タヌキ」だけを
引っ張りだして聴くのだ。


「たんたんたぬきのきん……」から
「たま」には行かずに
独特のユーモアを交えた不思議な言葉の連なりを
あのおなじみのメロディで遊ぶという
才人でなくては出来ない
あまりに軽過ぎる軽業。


作詞は学生時代からの盟友で
ミカバンドでもパートナーとなった松山猛さんだが、
加藤さんの虚無的な歌い方があってこそ
この曲には
底が抜けた
宙ぶらりのこわさもそなわる。


そして
40年間
ただのひとりも似た者の現れなかった、この声。


亡くなったというニュースが
悲しくてやりきれないようなときは
「タヌキ」を聴こう。