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なにかあり/とくになし

アンヴィル

吉祥寺バウスシアターにて、
ヘビーメタル・バンド、アンヴィルドキュメンタリー映画
アンヴィル 〜夢を諦めきれない男たち」をようやく見る。


ところが
心をうばわれる気まんまんで
スクリーンに向かったぼくを
アンヴィルの前でいきなり拉致したのは
この映画だった!


アンヴィル」の上映前に
この予告篇を仕込んだ人物はかなりの策士だ。


しかしね、おい!
毎朝10時から一回限りの上映て!
近日、前向きに検討したいと思います。


で、
アンヴィル」ですが、
日本で用意されたサブタイトル
「夢を諦めきれない男たち」には異論がある。


“諦めきれない”とは
諦めようとする瞬間が何度も訪れた人間に対する言葉で、
アンヴィルのメンバー2人は
たぶん一度も本質的な部分で夢を諦めようとしたことがない。


売れないままに20数年、
夢見る病が根深いからこそ
胸を打つ。


しがないヘビメタ中年ふたりのくすんだ人生が
ぼく自身にとっての
かけがえのない黄金に思えてくる。


ミッキー・ロークが主演した映画「レスラー」に
この作品はたとえられたりもしているが、
「レスラー」の主人公を取り巻く環境に比べたら
彼らが暮らす家庭はずっと温かくて
家族もやさしい。


だが、
やさしさの分だけ
我が身をしばられるということも現実だ。


そして、
そういう普通の人間たちが注ぐ
おそろしく普通のかたちの情愛が
メタルを愛しすぎた男たちの変態的な人生を支えていること、
それもまたどうしようもなく切なくてうつくしい。


クライマックスに向けて
さあ泣くぞと思っていたら
隣で見ていたツマが先にぐしゅぐしゅと泣いていた。


しまった!
先に泣かれた!


泣きどころをうしなった涙は
鼻水になると
知っていますか。


アンヴィルを見て
女性は涙を
男性は鼻水を
思いきり流したら客席がキラキラしてきれいだと思います。


ただひとつ、
不満というわけではないんだけど
せっかくコンサート並みのPA設備を擁し、
爆音上映会でもおなじみの
バウスシアター「シアター1」での上映なんだから、
音量、もっともっと欲しかったっす。
ヘッドバンギング出来るくらいでお願いしたいっす。


上映後、
街をすこしうろついて
今年の冬用に赤いジャンパーを買った。