柏木ハルコの勝負論
柏木ハルコが
いつの間にか「ヤングマガジン」に移籍していた。
「ビッグコミックスピリッツ」誌上で
最後に連載された「地平線でダンス」が
これは彼女の傑作になるぞと予感させたのに
何となく消化不良で終わってしまったことを
ぼくはひそかにかなしく思っていた。
だから
ある日「ヤンマガ」をパラパラとめくっていて
彼女の特徴のある太くてまるくしなった描線を目にした瞬間、
有無を言わせずページを閉じた。
え?
ファンなんだから
目にした瞬間ページを開くの間違いじゃないの?
いやいや、
小学館から講談社に移籍した彼女が
今度は何をしようとしているのか、
ちゃんと見届けたくて
コミックが出るまで決して読まないようにしたのだ。
そしてついに
「も〜れつバンビ」1巻(ヤンマガKC)が
今月発売になった。
テーマは闘牛。
テーマは強情。
テーマは下克上。
いやー、変わんないな、柏木ハルコは!
日本の離島などで行われている日本独自の闘牛文化を舞台にした
強情な美少女と弱虫な牛の物語だなんて、
時代にそぐうもへったくれもないストーリー。
いまどき
柏木ハルコ以外の誰が
この企画を押し通すことが出来るだろうか!
青年漫画誌としては
すでに「スピリッツ」にかなりの差をつけている「ヤンマガ」への移籍。
その点では勝負には彼女は勝った。
「ヤングサンデー」「スピリッツ」と
比較的ぬるめの環境で異彩をのびのびと放ってきた彼女が、
えげつないほどのアピールが重要視される「ヤンマガ」誌面の中で
どう勝ち抜けるかだ。
度を超した強情と
最低からの下克上という
デビュー以来一貫した彼女の勝負論が
ここでさらにひと皮剥けることを願ってます。