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なにかあり/とくになし

高いところから失礼しますよ その2

とっぷりと陽が暮れてきた
カジノ街のはずれにあるモーテルにて。


昼間見たあのタワーがどうしても忘れられなくて
ものはためしに検索をかけてみた。


出た!


あのタワー、
やっぱり300メートルあるそうだ。


そして屋上にある遊具は
3種類。


300メートルから
さらに350メートルまで一気に上昇し
フリーフォールを繰り返す「ビッグ・ショット」。


回転ブランコのように下からは見えたのは「インサニティ」。


放射状に伸びた鉄骨の先にふたりで腰掛けて回転、
徐々にその回転体はビルの外に移動、
本体がすべてビルの外に出たところで
座席が足下からうしろにそりあがり、
最終的に乗客は下を向いて回転するというもの。


最後はひらいた傘みたいになるというわけだ。
ぶるっ。


そして3番目が
現在のところ最新の遊具である「X・スクリーム」。


これが見た目的には一番スリリング。
単純に言うと
寸詰まりのジェット・コースターという感じ。


ジェット・コースターが
最初にじりじりとゆっくり上る坂の頂上から先、
降りるべきスロープが無く、
その代わりにレール自体がガクンと下に下がる。


乗っている客は
あわや地上へまっさかさま……というスリルを味わうというもの。
ぶるぶるっ。


うーん。
乗ってみたい。


最後に営業時間をチェックしてみた。


平日は深夜1時まで。
行けるな。
ぎゅっと財布を握りしめた。


ひとりで夜中の遊園地に行くなんて
どうかしてると思われるかもしれないけど、
どうせ「どうかしてる乗り物」に乗るんだから
どうかしなくてどうする!


その夜、
カジノに向かう宿泊客を乗せたシャトルバスに
ひとりだけ心に別の興奮を隠した日本人男性が乗り込んだ。


シャトルバスを待つ間、
あのひと妙にそわそわしていたわと
あとでフロントのお姉さんが証言するかもしれない。


もしも絶叫マシンで死んじゃったらね!(つづく)