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なにかあり/とくになし

高いところから失礼しますよ その5

ばびゅーん!


……と、打ち上がった連中が
落ちて(降りて)きたのは
一分後くらいだろうか。


2回ほど大きなアップダウンがあって
あとは何度かゆるやかな上下を繰り返しながら終了。


いよいよか。


さすがにそのころには
ぼくのうしろにも数人ほど列が出来ていた。
先客たちの退場を待って
いよいよ席へ。
当然ながら全席自由。
カジノ街を見渡せるベストポジションをキープした。


さすがに機動中は写メなどは不可能ということで
こまごまとして携帯品はすべて預ける。


あらためて夜空を見渡す。
高い。
そして結構さむい。
座っているこの場所ですら
すでに300メートルだ。
だいたい日本の高層ビルで
300メートルのベランダに出られるものなんてないだろ。


脇から腹へと締め付ける留め具が
ぎゅぎゅっと音を立て、
いよいよスタートのアナウンスが流れた。


カウントダウンが始まり、
いよいよ3、2、1……。
















































































































絶景!
そして
地獄!


350メートルは高かった。


下降するときに
座席から尻が浮いたその瞬間のことは
ちょっと忘れられそうにない。


天に巨大な悪魔がいて
人間どもを指先でひょいとつまみ上げて喰らおうとして
「なんだ男か、まずそうだ」と言って
下に放り出す。
「でも、腹減ったな」と
地面に墜落する直前に再び引き上げ
「どーしよっかなー」と迷い箸をする。


こいつはそんな遊具だったのだ。


悲しそうな犬の鳴き声を
ぼくもキャンキャンと出した。


ああ、おれは生きているのか死んだのか。


地面に戻り、
へなへなと階下へ降りたぼくを待っていたのは
何とエルヴィスの亡霊だった!



思わず握手。
うむ、生暖かい。


どうやらぼくは生きている。


次はこれに乗ります。(つづく)