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なにかあり/とくになし

高いところから失礼しますよ その6

超高層タワーの上の絶叫マシン行脚。
つづいては「インサニティ」。


ちょうどその回転の様子を
上から見下ろせる場所があり、
じっと観察してみた。


ほう。



ほうほう。



ほうほうほう。



ほうほうほうほう……(冷汗)。


これは要するに
開いた傘の内側に人間が座っていて
最終的には地面と300メートルの距離で
正面から向かい合うということですな。


300メートルぐらいの身長の
透明人間の美少女が
傘をさしてくるくる回してる
その傘の骨になったつもりで楽しもー! おー!


どうやらこのアトラクションが
ここでは今は一番人気らしく、
さっきの「ビッグ・ショット」よりも明らかに待ち人数が多い。


宙空で人間をじゃんじゃんぶん回すわけだから
安全確認にも時間をかける。
その手間の分だけ進行がとろいせいだとも言えるけれど。


ぼくの前には
若いアメリカ人の3人連れ。
男性がふたりに女性がひとり。


遊具の座席は二席でひと組だから
このグループからはひとりあぶれることになる。


仲良さそうに話しているけど
女の子はかなりかわいいし
誰も指輪をしていない。


こりゃまた恋の鞘当というか
ふたりの男のどちらかが
ぼくの隣にくることになるんだろうな。


十分ほど並ぶと
ついにぼくたちの番が来た。


ゲートが開き
めいめいに席を求めて駆け出してゆく。


あれ?
あれれ?


なんと一目散に手を取って駆け出したのは
男ふたりじゃないか!


えええええええええええええええええええ!?


「エクスキューズミッ!」
彼女が座ったのはぼくのとなり。


なんと
熱々だったのは
男性ふたりの方だった。


ブザーがなって
遊具がゆっくりと動き出すよりも早く、
ぼくの頭の中は
ぐるぐると混乱を始めていた。


「インサニティ」とは
日本語で「正気じゃない」という意味だった。(つづく)