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なにかあり/とくになし

「百舌谷さん逆上する」を読んでいる

篠房六郎百舌谷さん逆上する」(アフタヌーンKC)を読んでいると言うと
たいていドン引きされる。


あるいは
「途中まで読んだんですが無理でした」みたいな反応。


金髪の美少女(小学5年生)が遺伝的に罹患した病気、
それは「ヨーゼフ・ツンデレ博士型双極性パーソナリティ障害」
通称“ツンデレ”と呼ばれる
ほぼ不治の病なのであった。


このツンデレ症候群に冒された人間は
好きなものに対する感情を正反対の暴力行為で表現してしまい、
正常な人間関係が営めないまま
きびしい人生を送る。


そんな重い病をかかえた主人公の百舌谷さんをめぐる
変質的にして変態的な学園コメディ……という感じで
お話は展開する。


ぼくもまあ
そんな調子で
あはは、頭おかしいわ、この作者……と
最初はぼりぼりとM&Mでもほおばりながら付き合っていたのだが、
お話が進んでコミックの3巻。


この一冊の本を読んだ衝撃にならぶものは
最近他には受けていない。


一冊全体を使って進行される
夏休みの終わりをめぐるストーリーの密度の濃さと
それまでに丹念に撒かれてきた伏線の回収の見事さと
まったく予期していなかった感動に
満員電車の中で膝からかくっと落ちそうになった。


家族と偽家族と
小学生と大人と
ツンとデレと
SとMと
性とタブーと
愛と暴力と
愛せないことと愛さないことの違いとを
ここまでぎりぎりのバランスで描き(書き)尽くすことは
並大抵ではないと心底思う。


その日、
風呂場でもう一度3巻を読んだ(泣いても大丈夫なように)。


こういう良作が日本にはあるんだということを
海外にも知ってほしい。
そういう代理人になれないものだろうか。
いつもはあまり思わないようなことを考え、
長湯してぶくぶくと沈んだ。


3巻の巻末漫画では
昨年34歳の若さで亡くなり、
死後に日本SF大賞が送られたことで話題になったSF作家、
伊藤計劃氏との先輩後輩としてのかかわりが
簡潔ながら哀悼の意を込めて描かれている。


聞けば
「ヨーゼフ・ツンデレ博士型双極性パーソナリティ障害」とは
もともと伊藤氏の命名だったのだ。


今、コミックは4巻まで発売中。


篠房六郎
どうやら女性作家のペンネームらしいのだが
生年は不明ながら
誕生日が10月28日だという情報を得た。


ギクリ。


おれと一緒ですよ。