mrbq

なにかあり/とくになし

雨の日の女、雨の日の歌

またしても寒い雨の朝。


中杉通りを歩くと
よく使っている中華料理屋さんの隣が
更地になっていた。


はて?
ここに建っていたのは何屋さんだったかな?


思い出せないまま歩き続ける。


そうでなくても
最近、阿佐ヶ谷の北側は
閉店する店が増えている。
駅前ビル地下にある東急ストアも
5月の連休明けには撤退してしまうのだ。


仁義なき阿佐ヶ谷。
天候同様おだやかならず、だ。


雨の中
お店に電話が一本。
今度発売になる
ある女性シンガーの新作にコメントをもらえないかという依頼だった。


0.1秒も間を置かずに「はい」と答える。


しばらくしたら
そのサンプルCDを持って
ディレクターと
共同プロデューサーの女性が見えた。


その女性とは誰あろう、
ぼくの大好きなあなたじゃないですか。
まさか一緒に見えるとは思っていなかったので
松永良平は硬直した。


しどろもどろのあいさつと
依頼のお礼をして
お引き取りいただく。


雨の日の女。
ぼくがボブ・ディランなら
今日あの曲を書くだろう。


寒い雨に震えながら帰宅。


明日はまたばか暖かくなるのだという。
そしてその翌日からは
さらにおそろしく冷えるのだとも。


あまりに気まぐれな天気のせいで
風呂に入りながら頭に浮かぶフレーズは
「めーぐーるー、めぐるーきせつのなかでー」。


いくら思春期のヒット曲とは言え
我ながらこの連想はあまりに恥ずかしいと思い
似たような言葉に置き換えてみた。


「めーぐーろー、めぐろー寄生虫館のなかでー」


うん、これなら歌えそう。
すこし字余りだけど。


そして思い出した。
あの更地のこと。


あそこは
郵便局だった。
郵便局も
消えるんだな、今の世は。