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なにかあり/とくになし

「おんなのこ物語」後編

昨日いただいた
森脇真末味おんなのこ物語」(ハヤカワコミック文庫)は
大変な作品だった。


80年代初めという作品の描かれた時代を
意識せずにはいられない絵柄やセリフ回しに
多少の抵抗はあるかもしれない。


しかし
そんなものすぐに忘れる。


この作品が大変なのは
ロックバンドをテーマにしながら
ロックをやることによる解放ではなく
心地よい場所にいられなくなるということを
少女漫画という舞台を借りて
堂々と描き抜こうとしているからだ。


物語は
「こういう音楽を聴いてきてよかった」ではなく
「こういう音楽を知らなければよかった」という場所で語られる。


ストーリーは不安定で青臭く
しかし
青臭さを青臭さのまま描くことで
読者に「そうでしょ?」と救いを求めるでもなく
作者自身にも答えがわからないまま進む(ように思える)。


作中、
コミックバンドが歌っているのが
憂歌団の「当たれ! 宝くじ」だったり、
バージン(ヴァージン)・レコードや
ZEレーベル(作中では“ZEN”と表記)をイメージさせるという
ある一曲が
物語を狂わせる存在として登場したりする。


1巻のあとがきでは
作者が京大西部講堂の舞台裏から
スターリンのライヴを見たときの記憶が語られていたりもする。


しかし
そうした固有名詞は
同じ趣味や嗜好を持つものへの
心地よさを与える意味では使われていない。


おなじあとがきで
作者である森脇真末味
自分の創作姿勢をこう述べている。


「かぶれちゃった他人のモノを核にするほど、無邪気じゃないぜ」


このあとがきは
1996年の最初の再発時に書かれたものだ。
ごめんなさい。
その14年後の2010年でも
その一行にしびれてしまいました。


夜、
知り合いのイベントをやっている
高円寺コネクシオンに立ち寄った。


店内では
委託の中古レコードが売られていた。


ナーヴスの4曲入りEPを見つけた。
「ハンギング・オン・ア・テレフォン」が
今さらどうしても聴きたくなったので
それをレジへ。


きっと「おんなのこ物語」のせいだ。


イベントに参加していたOさんからは
真島昌利の傑作ファースト「夏のぬけがら」の
プロモ盤アナログをいただきました。


ありがとうございます。


ビールとカレーとウーロンハイを飲んで
家まで歩いて帰った。