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なにかあり/とくになし

おはようひで次くんまだやろう

小田ひで次という漫画家のこと、
今まで気にしてこなかったわけじゃない。


絶対にひとくせあるはずの
繊細すぎる手書きタッチの世界。
ジブリに悩み成分を500%注入したような
そんな世界を勝手に想像し、
遠巻きに見ていた気がする。


平成漫画家実存物語 おはようひで次くん!」1巻(BEAM COMIX)という
ちょっと拍子抜けしそうになるタイトルの新刊が
そのバリアーを
これまた勝手に氷解させてくれた。


悩み多き40代初めの
売れない(しかし何かはある)漫画家の
日々懊悩をつづった
本人が忌み嫌っているところの“エッセイ漫画”。


もちろん
真実をあけすけに語っているようで
巧妙につくられたフィクションが多く含まれた話ではある。


しかし
「泳げるようになった人間は
 もう溺れることは出来ないんだよ」のような
作中の作者がうめく
ひとこえひとこえは
やはり真実なんだと思う。


1巻は
2006年という中途半端に遠い時期で終わっている。
この“1巻”は寡作である作者への
漫画を書き続けましょうねと念押しする刻印のようにも見えた。


今日届いた「CDジャーナル」最新号では
ゆらゆら帝国ミニ特集が組まれていた。


「空洞です」発表時のインタビュー再録、
解散までの全ライヴ・スケジュール、
「美しい」PVでアニメを担当した天久聖一への取材、
磯部涼さんによるニューヨークへの同行記など
10ページちょいの記事なのに“読みで”がでかい。


三上寛ゆらゆら帝国について語るインタビューが
おどろくほど三上さんの理解が深くて
くやしいくらいおもしろかった。


その後、
夕食前にふたたび「おはようひで次くん」。


「空洞です」一曲目の「おはようまだやろう」が
不意に「おはようひで次くん」と重なり合う。


おはようひで次くん。
おはようまだやろう。
おはようひで次くんまだやろう。