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なにかあり/とくになし

まるで永遠に減らない靴底みたいな音楽を

ostooandellという不思議な名前のバンドのことは
何ひとつ知らなかった。
こないだまで。


六本木で
サタデーイヴニングポストのライヴを見た帰り道、
電車が一緒になった
グッドラックヘイワ野村卓史から
はじめてその名前を聞いた。


思い返してみたら
つい最近の話じゃないか。


このバンドというか
中心メンバーのふたり(男性+女性)は
2004年まで東京でデュオ的に活動していたのだが、
わけあって一度沖縄に帰ることになった。


そのときに
彼らと親しくしていたサケロックのドラマー伊藤大地
なにかはなむけになることをと思い立ち、
音楽活動をやめていた野村卓史に声をかけ、
ostooandellの東京さよならライヴに
ふたりのユニットで出演した。


それがすなわち
グッドラックヘイワのはじまりであったという。


ああ、
そう言えばそんなエピソードのきれはしを
当時聞いていた気がする。


たのもしいことに
沖縄に帰ってからも彼らはostooandellであることをやめず、
自分たちのペースで音楽を続けていた。


ベースとドラムスが加わり
バンドとしてタフな地力もそなわってきた。


曽我部恵一さんのローズ・レコードから
セカンド・アルバム「ostooandell」も発売になったばかりだ。


とまあ、
そんなことはみんなあとづけのチシキ。
誰だってそんなうわべはつくろえる。
肝心なのは
6月27日、下北沢Indie Fan Club
午後7時のClub Queで
目の前にいる彼らを見てどう思うかってこと。


淡々と
すこし変わったコードでリフが鳴りはじめ
そのすぐあとをシングルトーンの印象的なメロディが
ギターで追いかける。


小さなからだで真ん中に立つ女の子が、
青いSGが乾いた音を出し、
高く張りのある
ノンビブラートな声で歌いだす。


その一曲でもう
魅せられてしまった。


やがて彼らの
決して急がない淡々としたグルーヴにつかまれる。


なんだろう
このひとひねりしてるはずなのに普段着すぎる感覚は。
それなりに苦労しているはずなのに
すくすくとした音楽は。


まるで永遠に減らない靴底みたいにしたたかに
すたすたと進む音楽。


どこかにありそうで
やっぱりありえなくて
あったらいいなと思える
そんな心地よい音楽への可能性を
彼らは持っている。


とても晴れがましい顔でここにいる彼らを
とても素直に祝福したくなった。


ぼくはまだostooandellのことを好きになったばかりだ。
大好きになった一曲目は
君はまるでダンスしてるみたいに」という曲だった。


でも
ostooandell」のことを
もっと前から知ってた気がするなと
ツマに言ったら、
何言ってるの、ここに書いてあったじゃないと指摘された。


その通りだった。
水上徹さん、慧眼!
そして
ostooandellを一度は生で見た方がいいと思います。