ゴトウユキコとともに
「ビッグコミックスピリッツ」は買わない。
いつからかそう決めていたのに
出した手を引っ込められなくなったのは
表紙に「ゴトウユキコ」の文字を見たからだ。
彼女のはじめてのコミック
「R-中学生」(ヤングマガジンコミックス)には
したたかに衝撃を受けた。
新連載「ウシハル」は
正確に言うと「月刊スピリッツ」からの移籍。
「月スピ」なら
忘れたふりして読まずに済ませられるのに
よりによって目の前に移籍してきやがった。
お話の内容は
ど田舎に住む少年の目だけに
家で飼っている乳牛の一頭が
人間の女(牛柄)に見えてしまうというもの。
他社作品ながら
「R-中学生」のスピンオフ的設定で
見たようなキャラクターが結構登場する。
「R-中学生」では
思春期を扱ったおそるべきストーリーテリングの才覚だけでなく
黒髪や黒目など
黒を狂おしく描かせて破格の才能を見せつけたゴトウユキコ。
牛を描かせて
あらためてわかった。
彼女は黒のあしらいに長けているだけじゃない。
白黒に秀でているのだ。
そしてその鮮やかな白と黒で
完璧なもやもやを描き出すのだ。
彼女は確かまだ20歳そこそこだと聞く。
ゴトウユキコの漫画を読みながら
もぞもぞと
もんもんと
どきどきと
じたばたと
心を揺り動かされながら
一緒に歳を取ることを許される中学生が
うらやましい。
ゴトウユキコとともに悩んで
ともに成長したりへこんだり出来たら
どんなにいいだろうと
真剣に考えた。
夕方、
渋谷のam/pmで。
外は雨になりそうだ。