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なにかあり/とくになし

松永くんはプロレス・ファンなんだよね

「松永くんはプロレス・ファンだよね」と
ときどき訊かれることがある。


正確には
元ファンか。
それとも
現在は会場には足を運ばず
テレビ中継をじっと見るでもなく、
現況を遠巻きに眺めるだけの
距離を置いた感じで、
褒められたものじゃない。


アメリカにいるときはWWEの放映時間帯を
なんとなく気にしながら行動し、
映画「レスラー」に涙を流す、
その程度のファンなんです。


こないだの話、
閉店間際にお店を訪れた知人に
あらためて
「松永くんはプロレス・ファンなんだよね」と訊かれ、
ドキッとした。


ちょうど
ターザン山本の「金権編集長ザンゲ録」を
読み終えたばかりのタイミングだったから
なおさらなにかを見透かされた気分になった。


ま、ま、ま、ま、まあ
そうかな……と
お茶をにごし気味に返事をする。


もっとも
彼が訊きたかったのは
「おまえは本当にプロレス・ファンなのか?」というような
喉元にするどいものを突きつけるような本質的な問いではなかった。


「こないだ変なラーメン屋に行ったんだ。
 どうもプロレス好きの間では有名らしいんだけど
 図体の大きなひとが本当に厨房でラーメン作っててさ」


ああ、それって
川田利明がオープンした
ラーメンと唐揚げの店じゃないの?


「あ、やっぱり知ってたんだ」


ああ、
やっぱり知ってたんです。
そんなこと知らなくてもいいんだろうと自分でも思うんだけど
そういうささいな
しかし
なんとも人間の情をくすぐられるニュースには
よわいのだ。


「へ〜」


その店について彼が語る率直な感想に対し
わざと気のないそぶりの返事をしながら
心のざわつきを押さえられない。


やっぱりそこ
行ってみたい、のかもしれない。


最近のプロレス界の
大きなイベントの勝敗とかは全然気にならないのにね。


まあその
ぼくはそういう感じのファンです。