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なにかあり/とくになし

感激! 偉大なるライノ! その6

mrbq2010-10-27

ロサンゼルス近郊のウェストウッド通りで
ひそやかに
しかし熱く
二週間にわたって行われているライノ復活祭。


その終盤戦に立ち会う幸運をさずかったぼくは、
日中はよその店で買付をしていても、
なんだかんだと理由をつくっては
連日足を向けた。


エミット・ローズのドキュメンタリー映画上映と
彼にサインをもらった顛末については
こちらに詳しく書いている。
書かずにはいられない体験だった。


それからそれから
ピーター・ケイスのライヴも見たけど
本当にこいつが
あの伝説のパワーポップ・バンド、プリムソウルズの、
そしてさらにその前に
ザ・ビートのポール・コリンズとやっていた
もっと伝説のバンド、ナーヴスの
オリジナル・メンバーかと目を疑うほど
肉体が白熊化していた!


ぐしゃぐしゃにひずんだテレキャスを鳴らしながら
トリオバンドで臨んだ叩き付けるような演奏には
ポンコツとヴィンテージの間にある
妙な凄みを感じたのは間違いないけれど。


サーストン・ムーアが
友人で元ライノ・ストアの店員だったミュージシャンとやったという
即興演奏には間に合わなかったが、
これまた
その場に居合わせた客の大半が顔をしかめたという
ひんしゅくものだったらしい。


しかし
同時にそこに居合わせたひとびとは
こうも思っていたはずだ。


ひんしゅくなくしてロックじゃなし。


ぼくはと言えば
毎日顔を出して
ちょっとずつ追加されている中古LPやグッズを買っていたので
そのうちレジの女の子に顔を覚えられてしまった。


クレジットカードを使うときは
ID(身分証明証)を見せないといけないのだが
「ああ、あんたは(見せなくて)いいわ。毎日来てるもんね」と言われる始末。


キキキキと
ヘンタイチックにぼくと彼女は笑った。


あらためて見渡すと
店内にあふれかえっていたレコードやCDも
ずいぶんとさびしくなっている。


売っているものは
ライノ・レコードの商品とは限らず、
十年くらい前のものが多いから
おそらく本当に
かつてこの2軒隣にあったライノ・ストアで
売っていたものの残りだったのだろう。


また
店の一画で行われていた入札制のオークションも
しめきりが迫っていた。


リチャード・トンプソン
ライノ・レコード・ストアのために先だって行ったライヴで
実際に使ったギター(サイン入り)や、
90年代初頭と思しき
ロス・ロボスのメンバー全員のサインが入ったポスターに
人気が集まっているようだ。


いよいよ明日は
ファイナルデイ。


当初発表されていたラインナップは
テンプルシティ・カズー・オーケストラ、
フランク・ザッパも手を焼いた本当の狂人にして
ライノ・レコードの第一号リリース・アーティストでもあるワイルドマン・フィッシャー、
アメリカ版かしまし娘といった感じの
三つ子のおばあさん、デル・ルビオ・トリプレッツといった
相当に奇々怪々な顔ぶれだったが、
どうやらそれはライノならではのジョークだったらしく、
実際に出演するのは
ルーベン&ザ・ジェッツのルーベン・ゲバラ
ビリー・ヴェラなどになるらしい。


もちろん
カズー・オーケストラは
ジョークとなって消え去ったりはしていない。


明日17:30、
カズー・オーケストラの
おそらく最後のライヴ・パフォーマンスが
行われる。


21世紀の奇跡、いや奇癖に突き動かされて
ここまで生きてきた連中の
幕引きの一部始終を
ぼくは目撃したいと思う。


そういう楽団が出演するので
明日はここへの到着は時間厳守でお願いしますと
ドライバーのYさんに説明した。


Yさんは
「そうなんですか」と
感動していいのか
困ったほうがいいのか
一瞬どっちともつかない顔をして笑った。


感激! 偉大なるライノ! その6 松永良平