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なにかあり/とくになし

ア・デイト・ウィズ・バンヒロシ その3

イベント「バンヒロシ大学」が終わった夜、
安田さんご夫妻は
電車の都合で11時過ぎには神戸に戻っていったけど、
女性シンガー・ソングライターの安藤明子さんが
最後まで残ってくれていた。


ハライソの2階で
安藤さんとばったり顔合わせして
それからしばらく話をした。


東京に行くと
阿佐ヶ谷の友だちの家に寄る機会が多いんですと
安藤さんは言った。


「松永さんを見かけるかもと思ったりもするんですが」と言われて
「でも、おれ、歩くの速いから」と答え、
会話にしばし不思議な間が空く。


「いや、見えないくらい速いわけじゃないんだけど」


自分のボケに自分でつっこんで、
ふたりで
ばかばかしく笑った。


お店もそろそろ閉店ということで
バンちゃんと安藤さんとぼくとで
近くのなか卯に腹ごしらえに向かう。


「今日の話
 まるで京都のフォレスト・ガンプみたいだったって知り合いが言ってましたよ」


うどんをすすりながら告げると
「でもそれって、京都の裸の大将みたいにも聞こえるな」とバンちゃんは苦笑した。


「ほんで明日はどうしよか?」


バンちゃんとは
朝から東寺のがらくた市をのぞく約束をしていた。
ツワモノのコレクターたちは
朝6時ごろから集うらしいと聞いたが
別にそれほど燃えてるつもりもないし
9時くらいでいいんじゃないかという結論に達した。


朝8時の開店から
六曜社でバイトだと安藤さんが言っていたので
東寺の前にまず河原町三条まで行くつもりだし
そのスケジュールで
ちょうどいい。


バンちゃんとの待ち合わせは
がらくた市で
9時頃
適当に
ということになった。


ふたたびハライソに戻り
荷物を引き上げ、
安藤さんは自転車で
バンちゃんはバイクで
ぼくは徒歩で
数時間後の再会を期して
それぞれ別の場所に別れていった。


途中まで
ハライソのユキカワくんの奥さんがぼくに同行してくれた。
お店の成り立ちについてすこし話を聞く。


二階をのぞく天窓がいいですねと言ったら
「自分たちで開けちゃったんですよ。
 引っ越すときは現状復帰と言われているので、
 あそこに30年は住むしかないかも」と
奥さんは笑った。


30年後に
この町の名物になった
ハライソの吹き抜けを想像して
おもしろいような
たのもしいような気分がした。


さあ
明日は朝からバンちゃんとデイトだ。


ア・デイト・ウィズ・バンヒロシ その3 松永良平