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なにかあり/とくになし

ア・デイト・ウィズ・バンヒロシ その10

ランチタイムが終わった昼下がりのスマート珈琲には
すこし並んだら入れた。


ぼくたちのような
中年男性のふたり連れは
周囲には見当たらない。


ふたりでプリンをふたつ注文する。
ついでにぼくは
“お嬢”がせがんだというクリームソーダも頼む。


真っ青なソーダに白いアイスが浮かんだ
そのかわいらしい姿は
高血糖人間殺し!


プリンは
よけいなトッピングもなく
想像したよりもずっと
シンプルでしおらしいものだった。


プリンを食べるバンちゃんを一枚写真におさめようとすると
ニカッと笑ってポーズでもとるのかなと思いきや、
すこしうなだれてみせ
アンニュイなフレンチボーイみたいな演出をするのが
おかしかった。


あえて言えば
人なつっこさのなかに立ち上る
この無意味なほどに徹底されたエレガンスというか
意表を突くエスプリのようなものこそが
バンちゃんの本質にはあるのだと思う。


だからだろう。
この土地に生まれ育っていながら
不思議なくらい土着したところがない。


「おれは変なところで渋谷系つながりみたいになっとるから
 ときどきこっちでイベントとかやると
 若い子に『バンさん、今日は京都に泊まりですか?』とか言われんねん。
 京都にいると思われてない。
 毎日そこらへんうろうろしとるのになあ(笑)」


プリンをつっつきながら
しみじみとバンちゃんは言った。


そのマボロシめいた存在感は
昨日の夜ハライソでたっぷり聞いたおもしろ話に
手柄話やもうけ話にまつわる
いやみな匂いがすこしもしないこととも関係している。


わらしべ長者のたとえは
確かにバンちゃんのおもしろおかしな人生には当てはまるのだが、
バンちゃんは
手にした幸運にすがりついたり
なりあがったりすることもなく
すぐまた元手をゼロにして生きるようなところがある。
だからこそ
その痛快さや
さわやかさや
真の意味でのヒップさが、
ひとの目ばかりを気にして生きているような人種には
マボロシとしか映らないのだ。


「プリン、うまいな」


カラメルの部分だけでなく
焼きプリンの上の部分、
つまりひっくり返すと下にくる面も焦げ付かせているのが
絶妙なおいしさだった。


42歳と51歳の
ふわふわした京都デイトは
プリンをたいらげて終わった。


最後に
荷物を引き上げに行ったJET SETで
バンちゃんおすすめの
しゃかりきコロンブス。君が誰かの彼女になりくさっても」を購入。


「この曲を
 奇妙礼太郎がよっぱらって歌うことがあるんやけど
 それがまた最高なんよ」


そんな気の利いた推薦を
ぽろっとしてくれるバンヒロシが
また最高なんよと
ぼくは言いたい。


そう言えばバンちゃん
今月末に奇妙礼太郎と一緒にやりますね。


その告知を以て
「ア・デイト・ウィズ・バンヒロシ」全10回
終了とさせていただきます。
チャンチャン♪


11/28(日)京都拾得


出演 バンビーノ
ゲスト 島津田四郎・奇妙礼太郎
スタートPM6:30
チャージ1500円


ア・デイト・ウィズ・バンヒロシ その10 松永良平