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なにかあり/とくになし

たいめいけんよもやま噺

京都100000tで買ったもう一冊の本は
茂出木心護「たいめいけんよもやま噺」(旺文社文庫)だったと書いた。
帰りの新幹線で読むつもりだったとも書いた。


しかし案の定
帰路は爆睡。


というわけで
しばらくかばんのこやしになっていたのだが、
原稿にひと区切りついたので
こないだようやく
ぱらっと最初のページをめくった。


そしたら
この昭和の名コックさんの覚え語りが
おもしろいのなんの。


短いセンテンスで
時代風俗を思い起こしながら話は進むが
とくに時系列を追っているわけでなく、
それがよけいに
思い出し語りなのだという実感と(生唾と)をともなって
読む者をじわっとわくわくさせる。


67ページの海老フライの話なんて
にくいくらい素晴らしい。


あるプロ野球選手がたいめいけんを訪れたとき
ふとしたはずみで海老フライを
テーブルの下に落としそうになって
あっと誰もが思った瞬間
見事にキャッチ。


そのときその選手が言ったセリフが
「私は外野手でしょう。
 フライを落としたら監督さんにとてもしかられますからね」。


うまい(美味い)!


そんな気品と礼節と頑固な厳しさが
語りくちのすみずみから
じゅわっととろけでているのだからたまらない。


しかし
この本を風呂場に持ち込んで読んでいたら
途中で猛烈な睡魔に襲われ
熟睡してしまった。


熟睡だけならいいのだが
そのとき風呂の加熱をONにしていたので
湯の温度がぐんぐん上昇。


こくっとかしげたときに
鼻っぱしらをかすめたお湯の熱さで
目が覚めた。
やべえやべえ。


うまい海老フライの話を読んでいるうちに
自分がゆでだこになりそうだったという話。


こっちの話は
あんまり美味くないようで。