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なにかあり/とくになし

去年の暮れに受けたパンチだった

去年のうちに
びっくりしていたのに
書き漏らしていたことがある。


まあ
人生振り返ってみれば
そういうの結構いくつもあるんですが。


とりあえず
思いがさめないうちに
ひとつ言いたい。


東京ローカル・ホンクが
3年前に出したアルバム「生きものについて」が
久保田麻琴全面リマスターで
去年の暮れに再リリースされていた。


ジャケも新装版で。


リマスターと言っても
もともとは同じ演奏だし
どれほどのもんかねと高をくくって
軽い気持ちで聴いてみたら
下っ腹にぐいっと一発きついパンチをもらったような気分になった。


なんだろう。


久保田さんが
すでに一度は完成していた音源に施したミックスは
専門風に言えば
リミックスというか
ポスト・プロダクションということなのだが
もっと何か
じかに音のからだにさわったような
得体の知れない感じがあるのだ。


タイトルトラックの「生きものについて」は
もともとグレートフル・デッド的な
たゆたうというか
ゆらりとしたグルーヴが印象的な曲だったけれど
正直これほどのインパクトは感じていなかった。


ところがどっこい。


しゃわしゃわと鳴るシンバルは
まるでダブみたいだし
念入りにかつ直感的に加えられたエコー加工は
ギターやドラムスに
確かさと不確かさの両方を与えている。


その不明瞭さから生まれた
泥沼みたいなおぼつかなさをたたえたグルーヴのなかを
ビートと歌はずしずしと鼓動のように進む。


一瞬
これはCDに録音された音楽じゃなくて
ぼくに襲いかかる生きものの群れなんじゃないかと
わけもなく戦慄を感じた。


もともと
すごく良いバンドだとわかってはいたけれど、
まとまりの良さや
音作りのものわかりの良さにおさまってしまわない
生きものの性(さが)みたいな
どう猛さが
この新しいミックスでは引き出されているのだ。


こんなにわがままなバンドだったんだと
正直思い知った。


そして
彼らのライヴを
今年はどこかで必ず見てみたいと思った。