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なにかあり/とくになし

あわてんぼうの歌を聴け

ちょっとした持病持ちで
二週間に一回の割合で
近所にある病院に通っている。


いちいち診察は受けないが
薬をもらうために処方箋をいただく。


いつぐらいからだろう。


その病院の看護婦さんで
おそろしくあわてんぼうのひとがいることに気がついたのは。
ひとり、
いやもしかしたら、もうひとりぐらいいる?


受付の狭い小窓からでも
その向こう側で
書類をばさっと落っことしたり
ああでもないこうでもないと
看護婦さん同士で言い合ったりしてるのがまるわかりなのだ。


空いてるときは
いいのだが
最近は風邪が流行っているでしょう。


こないだ行ったときなんか
待合室はめちゃ混み。


そうなると
もう大変。


ドシャーとか
バサーとかいう擬音と
「あー!」とか
「きゃー!」という悲鳴が
ひっきりなしに聞こえてくる。


いわゆる“てんてこまい”という状態を
リアルに見ることが出来るというわけだ。


それでも
この看護婦さんたち
一生懸命仕事していることに違いはないし
そのあわてようがあまりに必死なので
なんとも憎めない感じもある。


病人がいっぱいで
沈痛な雰囲気が漂う待合室で、
彼女たちが発するドタバタな擬音や奇声は
なにひとつ隠れ立てしない人間らしさを見せつけてくれて、
いかにもここは病院ですよ的な
シンセによるとってつけたようなヒーリングBGMよりも
ずっと強力な気休めになっているという気もするのだ。


そして
そのつまらないBGMと
彼女たちの度を超した七転八倒コントラストは
ギャグすれすれのおかしみを醸し出すと同時に、
ギャップを内面にはらんだ
新鮮なサウンドに聴こえなくもない。


それはまるで
ぼくの好きなタイプの音楽みたいだ。


だとしたら
看護婦さんたちのライヴに
月に二回通ってるようなものかもしれない。