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なにかあり/とくになし

花をもって

間違っているかもしれないが、
昨日買った
スカートというバンドのCD「エス・オー・エス」のジャケット、
ぼくには
漫画家、鴨沢祐仁のキャラクターであった
クシー君が
ふてくされて煙草を吹かしているように見えてしかたなかった。


クシー君シリーズを知ったのは
ぼくが高校時代に「ガロ」を読んでいたころ
広告で見かけたのが最初だと思う。
すでに鴨沢さん自身の漫画は
そのころのガロには載っていなかったようにも思う。
80年代半ばの話だ。


和製タンタンみたいな
そのキャラクターの造形の
現実から切り離されたような
しかしなんだかせつなくて胸がくるしくなるような
そんな気分が記憶のなかに残った。
というか
田舎の高校生であったぼくは
間違いなくタンタンより先に
クシー君を知っていたよな。


そんなクシー君のことを思い出した今日、
鴨沢さんが3年前に亡くなっていたことを知った。
そして
その死と
死に至る晩年が
アルコールや孤独にさいなまれたもので
決してしあわせではなかったことも。


だが
変な言い方だが
あのクシー君の作者が
やはりキリキリと胸が痛むような心を抱えて
生きていたという事実は
ぼくに不思議な信頼感をあたえる。
それも事実なのだ。


2年も前の出来事で、
しかも思いつきの検索で見つけた訃報を
なんだか自分にとっておおごとのように書くのは本意じゃない。
しかし
スカートのCDが
このことを教えてくれた事実を
ぼくは覚えておきたい。


エス・オー・エス」の2曲目に流れた
「花をもって」を聴いて
ぼくはハアハアと息を切らして
帰る家のない犬のように走り出したくなった。