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なにかあり/とくになし

青すぎたハワイ〜トゥー・マッチ・ブルー・ハワイ その2

成田空港。
機内21時。
ホノルルに向かうはずの飛行機、離陸せず。


「うえー」とも「うおー」ともつかないうめき声が
客席からあがる。


こういう場合
いったいどうなるのか経験がないぼくたち兄弟は
不安気に顔を見合わせた。


「(ハワイそのものが)中止かね?」


冷静に考えればそんなわけないのだが、
それはそれで
おもしろいのではないかとも思った。


間もなく機体がゆっくりと動きだした。
ターミナルに戻るのだろう。


ふたたび機内アナウンス。


「まことに申し訳ございません。
 みなさまを適宜これよりホテルにお送りいたします。
 翌朝あらためてお迎えに参ります。
 よろしくお願い申し上げます」


「おー!」


小声ではあったが
なんだか興奮したような声をあげたのは
ぼくたちだけだったかもしれない。


ほかの乗客は
こういう事態には慣れっこというか
むしろ飽き飽きとしているというか。


粛々と飛行機を降り
見慣れないカウンターを通ってバスに乗った。


成田のまわりには
いっぱいホテルが建っているのを見た。
そのうちのどこかに泊まって
明日、代替便で飛ぶのだろう。


ところが
バスに乗り込んで
さらに驚愕の事実が待ち受けていた。


「え〜
 これからバスは新宿パークハイアットまで参ります」


「えー!」


と思わず声に出したのも
ぼくたちだけだった。
注意して聞いていれば
とっくにそんなアナウンスはあったのだろう。
気もそぞろなぼくたちが
聞きのがしていただけに違いない。


ここに至って気がついた。


ハワイってどうよ、なんて
うそぶきながら
ぼくは
浮かれているのだ!


バスは
思わぬ足止めをくらって憂鬱な乗客を満載して
新宿へ向かった。
ただし
ぼくたち兄弟を除いて。


このふたり、
このヘボい状況に対して
本気で浮かれはじめたのだ。


まだハワイへの離陸は遠い。(つづく)


青すぎたハワイ〜トゥー・マッチ・ブルー・ハワイ その2