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なにかあり/とくになし

青すぎたハワイ〜トゥー・マッチ・ブルー・ハワイ その6

一枚の写真がある。


大きめの部屋のベッドの上に
数名の男女が
手持ち無沙汰に腰掛けている。


部屋の灯りはくらい。


そのなかに
ぼくは
なんとも微妙な顔をして映り込んでいる。


居心地がわるそうだとまでは言えないが
楽しげではない。
同じ集団に属していながら
場を和ませたり
話題をリードしたりする役割を負えずに
ただその場にいるという感じ。


ぼくよりは明るくその場に溶け込んでいた弟も
なんとなく所在無さげ。


今のぼくなら
「おいこら! そんな顔してる場合か!」と言いたいところだが
当時はこれが現実だったようだ。


大学にもほとんど行かず、
3年ほど働いていたレコード屋のバイトもやめ、
所属していたサークルもやめ、
なんだか宙ぶらりんの状態だった自分のことを思い出した。


とは言え、
この写真の状況、
ぼくがどんな超人だろうが
どうにもならないものだったことは確かだ。


カウアイ島でのリゾート体験(細部はトイレ事件以外不明瞭)を経て、
一同はオアフ島のホノルル・ビーチに移ってきたところ。


そのホテルが
着いた日の夜、
いきなり全戸停電してしまったのだ。


ホテル側が善後策を練る間、
急遽、大部屋に招集がかけられ、
なんらかの連絡を待っていた。
この写真は
まさにそのときのひとこまだ。


しばらくして
「復旧が見込めないので別のホテルをご用意しました」
という連絡が届いた。


「別のホテルて!」


すくなくとも数百名は泊まっているだろう客を
総移動させるなんて手段があるのか。
妙なところで
アメリカのスケール感を実感したことを覚えている。


トランクを押しながら
ぞろぞろと移動したが
それがどのホテルだったかは覚えていない。
「すこし落ちるホテルだ」と
みんなが言っていたことは
ぼんやりと記憶に残っているけれど。


ツアーのなかには
前にも書いたが
弟と同年代の若い娘さんがいた。
彼女の姿も写真には収まっている。


ひょっとしたら
今回のツアー参戦を仕組んだぼくらの父親には
この旅行で彼女と良い仲にどちらか(ぼくか弟か)がなって……なんて
淡い思惑もあったのかもしれない。


明日は
彼女はおじさんおばさんたちとゴルフに行くそうだ。
ぼくはともかく
ゴルフ経験のある弟は
そっちに行ってみるのもいいかもしれない。


一方、
ぼくはと言えば、
明日はレコード屋に行ってみよう(やることもないし)、と
ぼんやりと考えていた。


今日来る途中に見かけた
タワー・レコード(当時はホノルルにも、まだあった)の店員に
中古盤屋の場所を訊いてみよう。
そうやって良い店を割り出す方法は
前の年に行ったニューヨークで体得したものでもあった。(つづく)


青すぎたハワイ〜トゥー・マッチ・ブルー・ハワイ その6