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なにかあり/とくになし

He loves Sanitizer

アメリカの(駄)菓子のことを続けて書いていたら
友人から妙なリクエストのメールが届いた。


「私の大好きなハンド・サニタイザーのことも書いてくださいよ」


どうして彼の好きなものを書かなくてはいけないのか
思わず苦笑してしまったが
おもしろいので話を続ける。


サニタイザーのことを意識したのは
あるとき
その友人と一緒にホテルにいたときに
ちょっとビールを買いに行くというぼくに
「あのさあ、
 手にちゅちゅっとつけて雑菌を殺すやつ
 買ってきてくれないかなあ」と
頼まれたのが最初。


インド人が経営するグローサリーストアに行って尋ねたら
置いてこそいなかったが
「それはサニタイザーというのだ」と教えてくれた。


サニタイザーとは
ジェル式のハンドソープ(手洗い液)のこと。


水やお湯を使って洗い流すタイプではなく、
出先でもちゅちゅっと手に付けて
肌をきれいに保つことが出来る。


モイスチャー効果だけでなく
使ったあとに手に
さわやかな冷気みたいな感触が残るのも特長で
なるほどこれはクセになる。


アメリカでは
家庭用の大きなものから
携帯用の小さなタイプまで
色や香りに応じて無数のヴァリエーションが存在するし、
生活実用品としての有用のみならず
おしゃれ用品として機能していたりもする。


思い返してみたら
いつだったか
うちのツマも
アメリカ旅行のみやげに
いくつか買っていたな。


日本ではあまり流行っていないように見えるのは
人目につくような場所は清潔なのが当然と
前提論で考える日本社会と、
そういう場所は汚れてしまうものだよと
現実論で考えるアメリカ社会との
違いのあらわれだったりするのかもしれない。


現実に対応すべく生み出されたものを
チャーミングにするのがうまいというのは、
恐怖を笑いに変える力だったり
イレギュラーなものを社会や思想に取り込む寛容だったりもする。


八百長とか
政治と金とか、
あくまで前提論に立って
「もとから断たなきゃだめ!」と
建前だけを言い張って困り果てるのではなく、
「じゃあサニタイザーを使って何とかしましょう」と
日本人も言えないものだろうか。


ちなみに
サニタイザーは
キュートな姿かたちをして売られていても
手についた雑菌を99.99%まで
15秒以内で死滅させる力を持つと言われている。


サニタイザーを知った場所がロサンゼルスだったので
「LAなのにジャームス(雑菌)を殺すなんてすごいな」と
友人と笑った。


ジャームスとは
1970年代にロサンゼルスで活動し、
今もめちゃくちゃにリスペクトされている
破滅型のパンク・バンドの名前だからだ。