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なにかあり/とくになし

ぼくのハリウッド・ボウリング その3

アメリカ生まれで
アメリカで育ち
しかし
ご両親はれっきとした日本人であるTくんと
最近はウェストコーストを一緒にまわることが多い。


安い席で申し訳ないが
日ごろの激務のねぎらいにと
この日のハリウッド・ボウルをおごった。


Tくんは
きれいな日本語を話すし、
もちろん英語も問題なし。
会話のなかには
英語で考えて
日本語でしゃべっているような瞬間もある。


ぼくよりは
一世代下のTくんは
バッファロー・ドーターチボ・マットも知らず
イエロー・マジック・オーケストラ
“名前くらいは知っている”という状態。


彼をリトマス試験紙にしてみたというわけでもないが、
日本人でありながら
アメリカ社会を生きている彼に
このコンサートがどう映るのか
舞台の上だけでなく
自分の隣にも
ぼくは興味深く目と耳を凝らした。


Tくんは
すんなりチボ・マットに軍配をあげた。


「歌っていることがおもしろいし
 盛り上げ方がうまいですよね」


チボ・マットが演奏していた曲は
96年リリースのアルバム「VIVA! LA WOMAN」からで
ほとんどオリジナルのアレンジに忠実なものだったが、
「ちょっと懐かしい感じもいい」と彼は言った。


一曲歌い終えた本田ゆがが
英語のMCで
「ねえねえ
 あたしたちもいい加減トシだからさー!
 あんたたちの声がよく聞こえないんだよねー!
 もっと騒げー!」
とあおり立てると、
観客は素直にウオオオオオーと声をあげた。


それは古典的な方法だが
とても有効だった。


つづく。