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なにかあり/とくになし

その25ドルのチケットは世界で一番安い その2

エントランスから
吹き抜けになった中庭をすこし進むと
もうそこにラルゴのホールはある。


古い映画館を改装した
というか
ほぼそのままの造作を残していて
椅子のビロードにも年季が入っている。


ぼくの席は
今日は舞台に向かって右手の
前から5列目の端。


約2年ぶりだが
基本的な舞台装置に変化はない。


左端には
改造アップライト・ピアノと
各種キーボード及びアタッチメント。


ピアノの上には
両サイドに立派な角の生えたバイキングの兜が
今夜も乗っかっていて、
ここが彼の音楽にとっての心臓部であり、
また、
永遠のがきんちょとしての
ワクワクする秘密基地であることを雄弁に物語っている。


中央には
手前にマイクが一本。
その後方に立てかけてあるギターは2本。
グレッチかなと思われるセミアコ
テレキャスター


さらに
その奥にはドラムス。


舞台の右手前には
ヴィブラフォン


その奥に見える黒い箱は
なんだろう?
テルミンか?


そして
右端には
いつものように
アコースティックからエレキまで
彼がその日の気分とやりたい曲にあわせて選ぶ
各種ギターが7本。
中央の2本とあわせて
9本のギターを用意しているわけだ。


うん、
ここまでは
おおむね前回見たのと同じ。


しかし
舞台の上には
明らかに前とは違う演出も用意されていた。


後方の壁に
ぶら下げられた長方形の白い幕がふたつ。
たぶん
これはスクリーンだろう。


どういうふうに使うのかわからないが
ふたつのスクリーンが
新しい謎として
ぼくの期待値をさらに押し上げた。


ラルゴのマネージャー(入り口で“もぎり”をしていた)が
ホールの入り口のドアから顔を出し
「フィフティーン・ミニッツ!」
と呼びかけた。
ショーのはじまりまで、あと15分。
今日はすこし“押し”ではじまるらしい。


「間もなく開演となりますので、ご着席ください」


なんて
作り置きのアナウンス・テープなんて使わない。
それもラルゴの流儀。


やがて
舞台の手前中央につかつかと歩み寄ると
彼はこんなあいさつをした。


「みなさん
 今日もラルゴに来てくれてありがとう。
 おかげさまで今夜はソールドアウトだ。
 明日もジョン・ブライオンのショーはやるし
 来週もいろいろおもしろいショーがあるから(具体名を挙げたが省略)
 是非チェックしてくれ。
 今、ジョンは
 カリフォルニアのドラッグ解放の是非とその諸問題について
 今日のゲストと熱く議論している最中でね(笑→お客さんも爆笑した)。
 もうすこししたら議論も解決して出て来てくれると思うよ。
 それからわかってると思うけど
 携帯電話の電源は落としておいてくれ。
 もちろん今日のショーは写真撮影、録音、録画は厳禁。
 演奏中はお静かにお願いしますよ(笑)
 それでは、もうしばらくお待ちください」


「お静かにお願いしますよ」のところで
マネージャーもお客さんもクスッと笑うのも
いつも通り。


だって
後半のリクエスト・タイムになったら
お客さんはみんな黙っちゃいないもの。


何よりも
ジョン・ブライオンの作り出す音楽の一瞬一瞬を
無駄話して聴き逃すなんて愚行、
するわけないじゃん!


そんなことみんな
身を以て知っている。
だから笑う。
そういうしあわせ。


やがてBGMが消え、
客電が落ち、
スタッフがつかつかとマイクのところへ。


「レディース&ジェントルメン、
 ジョン・ブライオン


つづく。














突然ですが
津行ったー、って、三重に行ったわけじゃなくて
ツイッターはじめてみます。


こちらよりどうぞ。


どうなりますやら。
おてやわらかに。