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なにかあり/とくになし

将棋も出来ないのにどうして将棋漫画を読むんですか?

「将棋も出来ないのに
 どうして将棋漫画を読むんですか?」


そう訊かれると
すこし困る。


だいたい
そういう問いって
「楽器も歌もロクに出来ないのに
 どうして音楽聴けるの?」
というのに近くないか?


人間をきちんと描いていれば題材なんて何だって!


まあ
そう言い張ってはみるものの、
確かに
経験がないということは
テクニカルな面での理解から得られる納得を
感動から差し引いてしまっていることになるのかも。


かく言うぼくも
まったく将棋の経験がないわけではない。


兄が将棋が好きだった関係で
そのすぐ下の弟であるぼくは
よく家庭対局の相手に指名された。


でもちょっと待ってください。
全然ルール知らないんですけど……。


まあ
それでも何とかなってしまうのが
子どもの流儀というか
兄弟ならではの理屈を超えた遊び方。


しかし
ひと通り駒の動かし方を覚えてからも
兄にはまったく勝てなかった。


そりゃそうだ。
駒の動かし方は将棋のルールであって
勝ち方じゃない。


結局
ぼくは勝ち方を一度も教わることなく
こっちのほうがおもしろいもんと
山崩し(将棋崩し)派にあっさり転向した。


でも
兄に負け続けて
将棋が嫌いになったせいで
覚えたこともある。


それは
負ける側の気持ち。
負けたくないという気持ち。


羽海野チカ3月のライオン」の素晴らしいところは
いろいろ数えきれないくらいあるけれど、
題材が将棋であるせいもあって、
ぼくのなかの
負ける側の記憶や
負けたくないという記憶が発動して
いつもよりずっとエモーショナルになってしまうようだ。


なんてね。
まあそんなたいそうな話でもないけど、
ぼくは
将棋も出来ないのに将棋漫画を読んでいる。


というわけで
中村とうようさんの訃報に揺れつつも、
今日は
昼から夜にかけて
何度も本屋に足を踏み入れた。


3月のライオン」6巻が
一日早く売ってないかと思ってね。
売ってなかったけどね。